ヒューマンビジネスイノベーション

全日制専門校 2018/04/24 【学び働く人】

大学中退、会社倒産の危機を乗り越えて...
日本第1号の紙袋デザイナーが持つ出会い力

株式会社DRIVE ベリービーバッグ事業部
紙袋デザイナー 加茂 伸洋さん

株式会社DRIVE ベリービーバッグ事業部 紙袋デザイナー 加茂 伸洋さん

Profile

加茂 伸洋(かも・のぶひろ)さん(31歳)
1987年京都府出身。歴史を学ぼうと一度は大学へ進学するも2回生の時にデザイナーを目指し中退。2008年、総合学園ヒューマンアカデミー大阪校デザインカレッジに入学。2010年にデザイン事務所に就職も倒産の危機に遭い、2013年、ヒューマンアカデミーの講師である芦谷正人氏が経営する株式会社DRIVEに入社。紙袋デザインを手掛けるベリービーバッグ(berry B Bag)事業部に配属。2017年12月より東京・青山事務所を立ち上げる。日本初の紙袋デザイナーとして、顧客の信頼も厚い。趣味は映画観賞と自転車。

日本第1号の紙袋デザイナーとして活躍する加茂 伸洋さん。2018年1月には、TBSの人気番組「マツコの知らない世界」に出演、紙袋の奥深さを紹介しました。お客さんのニーズに応えて自在に紙袋をデザインする加茂さん。その原点は、総合学園ヒューマンアカデミー大阪校デザインカレッジでの経験にありました。

大学を辞めてまで、デザインの道へ。企業課題で現場の意識を

大学を辞めてまで、デザインの道へ。企業課題で現場の意識を

加茂伸洋さんがデザインの道に足をふみいれたのは、21歳の時。その当時、加茂さんはデザインではなく、大学で歴史を学んでいました。しかし、2回生の終わりにふと気づいたと言います。

加茂さん「歴史の仕事に就く方が難しい。高校時代、デザインも好きで興味があったので、やっぱりデザインの道に進もう、仕事にしようと決めました」

そして、選んだのが、総合学園ヒューマンアカデミー大阪校デザインカレッジでした。

加茂さん「何校か見学に行ったのですが、ヒューマンアカデミーは株式会社が運営する学校なので、実践的な授業が多く、実社会で使える技術を身に付けるところに主眼を置いていました。仕事につなげたいと思って大学を辞めてきたので、その職業訓練所みたいなところがよかったですね」

2008年4月に入学すると、企業課題が数多くありました。いろいろな企業課題を頂いた中から、数点のパッケージデザインが実際に商品化されました。一方で、採用にならなかったことも。

加茂さん「企業によっては、『頑張ったね』と何かしら学生の意見を採用することもあると思うんですが、『今年は何もありません』とまったく採用されない企業もあったりしました。難しい世界なんだな、リアルな意見だな、と。それも含めて楽しかったですね」

ヒューマンアカデミーのデザインカレッジ講師陣には、実際にデザインの会社を経営している人も多数在籍しています。教科書を読んでいるだけではない、実体験の話を聞き、実際の企業課題に取り組む日々が続きました。学生時代から実際の現場の意識を持てたことがプラスに働いているといいます。

勤めていた会社が倒産危機に。
恩師との出会いが「紙袋デザイナー」を生んだ

勤めていた会社が倒産危機に。恩師との出会いが「紙袋デザイナー」を生んだ

加茂さんは卒業後、広告会社に入社し、グラフィックデザイナーとして勤めはじめました。ところが、その会社が倒産の危機に陥ります。2013年のことでした。そんな時、会社からの帰り道、とぼとぼと歩いていると、ある人と再会。それが、総合学園ヒューマンアカデミー大阪校デザインカレッジでお世話になった芦谷正人先生でした。

加茂さん「ちょうど帰り道に、芦谷先生の会社がありました。先生の授業は受けていて、いつも『遊びにおいで』と言われていました。会社を辞めようか悩んでいる時にたまたまお会いしたので、相談してみたんです」

加茂さんはそのまま芦谷先生の事務所、株式会社DRIVEに入社。紙袋を手掛けるベリービーバッグ(berry B Bag)事業部を任されました。ここで加茂さんは、日本第1号の紙袋デザイナーとして活動を開始します。

加茂さん「最初は正直、紙袋は、お店にとっても、単なるおまけのようなものだと思っていました。でも、実際にデザインをしだすと、面がたくさんあるのでデザインの楽しさが詰まっている商材なんですね。紙や紐を工夫したり、内側にデザインを入れたり、遊び心のある楽しいツールだな、とすぐに気づきました」

紙袋デザイナーとは、たとえば、お店を経営する人から紙袋の注文があった際に、お店のイメージや使う用途に合わせてデザインする仕事。加茂さんは、紙袋がデザインだけでなく、お店にとって重要なものだと認識するようになりました。

加茂さん「モノを買う時って非日常ですよね。日常買わない、ちょっと高価なものを、勇気を出して買った時、『本当に買ってよかったのかな』という罪悪感が少しあると思うんです。でもかっこいい紙袋に入っていると、中に入っているものを想像しながら、『やっぱり買ってよかった』と思えますよね。紙袋とは、そういう非日常を日常につなげてくれるものなんだと思います。お店からしても、お客さんに手渡しする大切なツールだと思うんです」

紙袋デザイナーとして、「こうすると安くつくれます」ではなく「こういうイメージが合っています」とアドバイス。時には、「そのイメージは違うんじゃないか」と提案することもあるといいます。紙袋の使用用途だけでなく、顧客の人柄までを考えてデザイン。サンプルをみたお客様から「このデザイン、いいわー」と喜ばれることが増え、加茂さんは徐々に、紙袋デザイナーとしての自信を深めていきました。

「言われたら断らない、やってみる」。加茂さん流のコミュニケーション

「言われたら断らない、やってみる」。加茂さん流のコミュニケーション

ベリービーバッグの事務所は大阪でしたが、インターネットを通じてのお問い合わせは、東京都の企業が4割、関東圏の企業を含めると5割を超えていました。そこで、東京に本格的に事務所を構えることになり、立ち上げを任されたのが加茂さんです。そして、2017年12月、青山にギャラリーを開設しました。

加茂さん「実際に素材を見せるとか、提案するには距離が近いのが一番ですから。僕たちがつくったサンプルをお客様に見せる時というのは、しっかり反応が見られるし、楽しい瞬間ですね」

デザイン力はもちろんですが、それ以上に大切なのが、やはり「コミュニケーション力」。デザイナーは、アート作品をつくる方向に偏ってしまうと、デザインの完成度だけを求めてしまいがちです。加茂さんは、デザイナーが自分たちで勝手なものをつくるのではなく、いかに求められているものをつくれるか、気持ちを届けられるか、一緒になって考えることが大切だと言います。

加茂さんのコミュニケーション力は、ヒューマンアカデミー在籍時から発揮されていました。

加茂さん「ヒューマンアカデミーにはデザイン以外にもいろんな専攻があり、授業以外のイベントなどで、いろんなことに触れられました。僕はこういう明るい性格なので、誰とでも気軽に話していると、そのうち『この人はこういう考えをしているから、こういうものの見方なんだな』と分かります。自分の得意としている分野以外も幅広く見られるようになったというか、対応能力がつきました」

だからこそ、これから何かを目指す人には「自分の好きなことだけをしない」というアドバイスを送ります。

加茂さん「嫌なことでも進んで向かっていく方が、後々になって、すごく得したなと思います。言われたら断らない、やってみる。頼まれた時は、授業の課題の倍の作業になって、大変だったなとは思いますが、その分、デザインに触れる機会も多くありました。大変に見えても、それも楽しかったですね」

紙袋文化をもっと身近に。想いを伝える役割を個人にも。

紙袋文化をもっと身近に。想いを伝える役割を個人にも。

加茂さんが次に挑戦したいこと。それは、紙袋の文化を変えることだと言います。ヒントは海外のスーパーマーケットにありました。

加茂さん「海外でスーパーに行くと、グリーティングカードが壁一面にずらっと並んでいますよね。カードで想いを伝える文化が大きいと感じます。僕はそれを、日本で、紙袋で実現したいんです」

物を手渡しする特別な機会に、個人が気軽に想いを伝える手段として、紙袋をカスタマイズする――そういう文化を創り出したいというのです。

加茂さん「たとえば、結婚式の引き出物とか、お父さんの誕生日とか。紙袋にメッセージやイラストが入っていると、気持ちの伝わりようがまったく変わってきますよね。紙袋は『ありがとう』という気持ちを手渡しできるアイテムだと思うんです」

手書きのイラストやメッセージ、写真...。紙袋デザイナーの加茂さんの手にかかれば、世界にひとつのオリジナル紙袋が簡単にでき上がります。今はまだ、紙袋を個人でつくるという発想があまりない社会ですが、日常的に使う紙袋だけに、気軽に特別なものを注文できる日はそう遠くないかもしれません。加茂さんの挑戦は続きます。

※2018年3月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものとなります。

加茂さんが紙袋をデザインしてくれるberry B Bagのホームページはこちら

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