育児とキャリアの両立に挑み見えてきたこと。<br>育休から復帰した女性マネジャーの奮闘記
教育事業

育児とキャリアの両立に挑み見えてきたこと。
育休から復帰した女性マネジャーの奮闘記

ヒューマンアカデミー学童営業部 マネジャー
藤本 美枝子

教育事業を展開するヒューマンアカデミーは、女性社員の産休・育休の取得率、復帰率がともに100%となりました。インターナショナル学童保育施設「Hiraku Kids(ひらくきっず)」の営業部長・藤本美枝子も、そのうちのひとり。育児とキャリアの両立、そして新たに見えてきた仕事への思いを語ります。

女性社員研修への参加をきっかけに、マネジャー職へのステップアップを決意

ヒューマンアカデミーで学童保育部門の営業部長を務める藤本

藤本がヒューマンアカデミーに入社したのは、2004年。全日制教育事業部で営業を担当した後、営業の仕事と兼務して、首都圏の新卒採用と全国の新卒研修にも携わるようになりました。
いまでこそヒューマンアカデミーの社員は男女比率がほぼ半々ですが、藤本の入社当時は女性社員がまだ少なく、特に営業部門では、結婚や出産を機に退職してしまう女性も珍しくありませんでした。

そんななか、藤本にとって転機となったのが、入社10年目の2014年に女性社員研修を受けたことでした。

藤本 「現在は入社3年目以上の女性社員を対象に年1回、研修がおこなわれていますが、私が参加したのは第1回のタイミングでした。
女性社員研修では全国から20~30人が参加し、社内のさまざまな部署で活躍している先輩・後輩の女性社員とディスカッションをしたり、結婚して子育てを頑張りながら仕事を続けている女性社員のプレゼンテーションを聞いたり。
とても刺激を受けました。女性のライフスタイルは人それぞれで、人生のその時々によって働き方も変わっていく――。経験者から、じかに話を聞くことができ、自分のキャリアについて改めて考え直すことができたことは、大きな収穫でしたね」

この研修をきっかけに、藤本はマネジャー職へのステップアップを決意します。
ヒューマンアカデミーのマネジャー職は、一般企業でいう課長に相当し、1校舎の拠点長として拠点の運営全般を任されます。
大きな責任を負うことではありますが、研修で同じグループになった社会人教育事業部の女性マネジャーから「一緒に頑張ろうよ」と励まされたことが、チャレンジしたいと思っていた藤本の背中を押したのです。

昇進と同時期に結婚。産休・育休中は仕事復帰が待ち遠しかった

現場には時間が許す限り出向き、スタッフとの連携を密にする

女性社員研修を受けた翌年の2015年、藤本はマネジャーに就任。
山梨県河口湖のそばにある釣りの専門校、ヒューマンアカデミーフィッシングカレッジの拠点長となったのです。そして同じ年に元同僚と結婚、2017年1月から産休・育休を取得しました。
2017年2月に長男を出産し、4月から職場復帰を果たしますが、出産直後には軽いマタニティブルーも経験。早く仕事に戻りたかったといいます。

藤本 「出産した2月は、夫は年度末のため帰宅が遅い日々でした。私の親も働いているので日中は誰も話し相手がおらず、2月、3月はずっと自宅で子どもと2人きりの生活。
家に閉じこもっていると社会から取り残されたような気がして、早く職場に復帰したかったですね。復帰後、『お昼休みに誰かと話しながら食事ができるのは、すごく貴重な時間だな』と、しみじみ実感しました」

もともと藤本は残業が少なく、産休取得前の残業時間は月20時間程度。そこで復帰後も、時短勤務ではなく、9時から18時までのフルタイム勤務を選択しました。育児をしながら仕事をこなしていける自信はあったといいます。
しかし復帰した藤本を待っていたのは、拠点長をとりまとめる営業課長(現:営業部長) の役職と、経験したことのない新しい仕事だったのです。

藤本 「民間学童保育施設のヒューマンアカデミーアフタースクールを、ネイティブ講師による英語プログラムや、ヒューマンアカデミーで実績のあるロボット教室や理科教室、日本の伝統文化を学ぶプログラムなどを取り入れた、新しい形態の”インターナショナルアフタースクール”にリニューアルする業務を任せられたのです。
児童教育にかかわるのは初めての経験でしたが、夏にリニューアル方針が固まり、翌年の春には開校することが決まっていたので、もう待ったなし。『やるしかない』という気持ちで取り組みましたが、復帰1年目は、まさに怒涛の1年間でした」

復帰後の怒涛の日々。「優先度を見極め、人に任せること」の大切さを学ぶ

藤本は復帰1年で、インターナショナル学童保育へのリニューアルを実現

学童保育のリニューアルの仕事は、多岐にわたりました。
新しいアフタースクールの全体コンセプトの構築から、英語プログラムを提携する東京インターナショナルスクールグループとのやりとりや調整、全体カリキュラムや個別プログラムの策定、教室の内装リニューアル、体験会や説明会の準備、生徒募集……。
タイトなスケジュールで次々と仕事をこなさなければいけない状況下で、仕事のスタイルにも変化が生まれました。

藤本 「出産前は『最後まで仕事をやり切ることが大事』と考えていましたが、自分だけで全部の仕事を完璧にやり切ろうとすると時間が足りませんし、ほかの業務にもシワ寄せが及んでしまい、仕事が回りません。いい意味で『あきらめること』や、どこかで区切りをつけて『人に任せる』ことをしないとダメだな、と痛感しました。
そう気づいてからは、仕事の中で『いま自分が本当にやるべきことは何か』をすごく考えるようになりましたね。仕事の優先度を見極め、自分が関わる部分と人に任せる部分を切り分けて、1日、1週間、1カ月単位で細かくタイムスケジュールを組み、仕事に取り組んでいます」

女性が仕事と家事や育児を両立するうえで欠かせないのが、家族の理解と協力です。その点についても、藤本は非常に恵まれているといいます。

藤本 「夫の出勤時刻は朝10時。私よりも遅いので、朝食の支度と長男を保育園に送っていくのは夫、お迎えと夕食準備は私の役目です。毎朝、夫が朝食をつくる横で、私が夕食の用意をします。帰宅後のあわただしい時間に備え、2人で朝食づくりと夕食準備を同時に走らせるわけです。
子どもが急に体調を崩して私の都合がつかないときは、夫が仕事を調整して子どもを病院へ連れて行ったり、実家に子どもを預けたりすることも。夫と両親のサポートなしには、とても仕事は続けられなかったと思います。
また、ヒューマンアカデミーには子どもがいる社員が多く、夫の上司や同僚の男性社員たちも育児に理解があり、いろいろな面でサポートしてくれます。私も夫も、職場のサポートにずいぶんと助けられていると思います」

プライベートでの育児経験が、いい形で仕事にもフィードバックされていく

息子との貴重な時間。子育てを経験中だからこそ、見えてきたことがあると感じている

働きながら育児に励む多くの女性にとって、1日で一番あわただしい、仕事を終えてから就寝するまでの間。藤本の場合も、定時の18時きっかりに退社、18時30分には保育園へお迎えに行き、19時に帰宅。19時15分から子供との夕食、20時には入浴……と、分刻みのスケジュールです。

藤本 「子どものお迎えからお風呂に入れるまでが『戦場の時間』です。休む暇はほとんどなく、例えるならば400mハードル走のようなもの。短距離の全力ダッシュではありませんが、全力に近いペースで走りながら次々と現れる障がい物をひとつずつ乗り越えていく感じで、なかなかキツいです。
家にいるときは子どもと過ごす時間を大切にしたいので、仕事は家に持ち帰らず、子どもが寝つくまで一緒に遊んだり、絵本を読んであげたり。毎晩11時には、疲れて寝落ちしていますね(笑)」

いまは日々の生活と目の前の仕事を回すことに精一杯で、正直言って先のことを考える余裕はまだないと語る藤本ですが、子育てを通じて新たに見えてきたこともあります。

藤本 「子どもと接していて感じたのが、子育てと部下の育成はとても似ている、ということ。例えば、子どもに『これをしちゃダメ!』と一方的に叱っても、なかなか言うことを聞いてくれません。
『そうか、これをしたいんだね』と、まずは子どもの気持ちに共感してから『でも、いまはこうしなくちゃいけないんだよ』と理由を説明して教えてあげると、子どもも納得してくれます。
部下の指導や社員の育成も同じで、相手に共感した上で理由を示して指導することが大事。 これは子育てを経験したからこそ、わかったこと。
また、母親になって変わったのが、自分の中での許容範囲が広がり、他人や物事に対して大らかになったことですね。こうした経験は仕事にもすごくいかせると思うので、いつかまた、社員の育成や研修の仕事に携わってみたいなと思っています」

「Hiraku Kids」の運営に関しても、プライベートでの子育ての経験が、現在進行形で役に立っているといいます。

藤本 「学童保育の責任者としてご利用者様の保護者の方々とお話していると、同じひとりの母親として共感できる部分が多いですし、自分の子育てのヒントを頂くこともあります。働く人たちの福利厚生の一環として、『Hiraku Kids』のような民間学童保育サービスを活用できるのではないか、といった新しいアイデアが浮かぶことも。
これから自分の子どもが成長するにつれて、習い事や学童保育がとても身近な問題となってくるので、実生活での経験をうまく仕事にいかしていきたいですね」

日々の子育てを通じて学んだことが、自身の成長につながり、いい形で仕事にもフィードバックされていく――。そんな好循環が確実に回りはじめているようです。

※2019年1月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものとなります。