【介護】日本の超高齢化社会を救う鍵。「外国人介護人材」の受入や就労を支援~これが私の挑戦

【介護】日本の超高齢化社会を救う鍵。「外国人介護人材」の受入や就労を支援~これが私の挑戦

ヒューマンライフケア株式会社 
海外推進室 室長

庄司 孝正(Takamasa Shoji)

1988年、ザ・ヒューマン株式会社(現・ヒューマンアカデミー株式会社)に入社。ヒューマンキャンパス大学進学予備校にて、学生募集・学務・進路指導など学校運営全般に携わる。1999年10月、2000年度開始の介護保険に対応すべく介護施設の開設準備に従事。現在は、全国175以上の介護事業所を運営するヒューマンライフケア株式会社の海外推進室 室長として、外国人材の受入事業に注力する。

私が取り組むSDGs

  • 3すべての人に健康と福祉を

    目標3

    すべての人に健康と福祉を

  • 10人や国の不平等をなくそう

    目標10

    人や国の不平等をなくそう

私が取り組んでいるのは、在留資格「特定技能」をもつ外国人の介護分野における就労支援です。ヒューマンライフケア株式会社は出入国在留管理庁より許可を受け、正式な「特定技能登録支援機関」として、外国人の方の就労前から就労期間中の支援全般を手がけています。具体的には、人材と企業のマッチング、試験対策や介護技術に関する教育提供、出入国時の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、公的手続きへの同行、相談対応など。介護の仕事を希望する外国人の方に寄り添い、安定的かつ円滑に仕事に従事できるようサポートしています。

ここで重要なのは、外国人の方と介護事業を展開する日本企業、双方にとって利益となる支援です。どちらか一方の立場で話をするのではなく、“最適なマッチング”が私たちの役割だと考えています。

向き合う社会課題

少子高齢化が加速する日本では、2025年、後期高齢者数が約1500万人から2300万人に拡大。超高齢化社会を迎えます。しかしながら、要介護者が増加する一方で、“介護人材不足”は深刻です。2025年には35万人もの介護人材が不足するとも言われています。この状況を打破すべく、日本政府が行なった政策が2019年の出入国管理法改正でした。新たな在留資格として「特定技能」を導入し、技能試験や日本語試験に合格した外国人の方は、介護をはじめとする人手不足が深刻な14分野での就労が認められるようになりました。それと同時期に、私たちも「特定技能登録支援機関」としての活動を開始。しかし、2020年新型コロナウイルスの水際対策の影響を受け、外国からの新たな人材受け入れは思うようには進まなくなったのです。

あと数年後に迫る超高齢化社会、それに対して国内では介護人材が全く足りていない状況…。そして、日本での就労を希望しながらも新型コロナウイルスによって働く場を失っている外国の方々…。その間に立つ私たちも多くの行動が制限され、思うように施策を進められず、非常に歯がゆい思いをしました。ですが、だからといってコロナ収束を待っていても何も変わりません。現状を捉えなおし、“今、私たちができることは何か”を考え続け、諦めず行動していこうと決意をしたのです。

解決に向けた取り組み

コロナ禍において、私たちが始めたのは、すでに日本にいる外国人の方を対象にした介護分野での就労支援です。海外からの新たな介護人材の受け入れが難しい状況なのであれば、すでに日本にる外国人の方を対象にしてはどうか。影響を受けず、スムーズに就労が開始できると考えたのです。一方で、そのような外国人の方との接点が課題となりました。日本にいらっしゃる外国人の方が、どこにいて現在どのような状況なのか…その把握がとても難しかったからです。

そこで、ヒューマンライフケアの視点だけでなく、ヒューマングループ全体の視点で解決策を模索し、グループがもつアセットを最大限に有効活用することができないか考えました。そして、見えてきたのが、グループ会社のひとつであるヒューマングローバルタレント株式会社との連携でした。ここではグローバル人材向けの転職サイトを運営しており、日本での就労を希望する多くの外国人の方が登録済みです。状況に応じて試験対策などの教育提供を行なうことで、「特定技能」在留資格を活用したかたちで就労の支援ができると分かりました。さまざまな部門との調整を経て、そこから少しずつ介護企業と外国人登録者をマッチングし、就労の機会を増やしていったのです。

確かな手応え、見えてきた成果

介護企業は、新たな人材確保として「特定技能」外国人の採用を積極的に推進しつつあります。しかしながら、企業側に全く不安がないかといえば、そうではありません。言葉の壁や価値観の違い、文化の異なりなど、共に働く上での懸念は多くあります。そして、それは外国人の方も同様です。だからこそ、私たちが双方をつなぐ“良い架け橋”となれたときは、この仕事の存在意義を感じることができるのです。

先日、取引先の介護企業から、現在働いている外国人の方に母国へ帰ってもらいたくない、とのお話をいただきました。個人の都合もあり、ゆくゆくは母国に帰ってしまうかもしれない。けれど、できればここでずっと働いてもらいたい…と話をされていました。採用の不安どころか、今では企業にとってなくてはならない存在になっていると分かり、とても嬉しかったですね。

また、外国人の方を採用するにあたって、社内で良い変化が生まれているとの声も耳にしました。それは、言葉の壁に考慮して丁寧な指導を心掛ける中で、日本人である自分たちができていない点に気づき、お手本になれるよう自身の仕事を振り返り、見直しをしたという方もいたそうです。新たな融合が生まれているのだと喜びを感じられた出来事でした。

私が目指す未来

外国人の方は、いつかは母国に帰ってしまう、だから採用して教育して無駄になるのでは…と考える人もいますが、私の考えは違います。介護の仕事に携わる外国人の方の多くは、20代の女性です。将来的には、たとえば母国に帰り、結婚して家庭を持ちたいなどと考える方が多いでしょう。でも、その想いを否定するのではなく、尊重し、日本で素晴らしい仕事の経験を積んでもらうことに向き合いたい。そうすれば、彼女たちが母国に帰ったとき、きっと“日本で働いた良い体験”を家族や友人に話してくれるでしょう。それが、新たな日本での就労を希望する方を呼ぶことにつながっていくと思っています。

それに、日本で学んだ介護スキルは失われることはありませんから、“強い武器”となって、母国でも大いに活躍されるのだと思います。そういった意味でも、「特定技能」は世界を幸せにする在留資格だと信じています。

※2021年11月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものです。