【保育】「孤食」から「共食」へ。『子ども食堂』から地域のつながりを。~これが私の挑戦

【保育】「孤食」から「共食」へ。『子ども食堂』から地域のつながりを。~これが私の挑戦

ヒューマンスターチャイルド株式会社 
白楽ナーサリー施設長

新場 晴美(Harumi Shinba)

保育士として17年間勤務後、2018年、認可保育園『スターチャイルド 白楽(はくらく)ナーサリー』施設長に就任。“地域に根差した保育園”を目指し、子ども食堂はじめ、育児相談会や保育講座、交流会などさまざまな取り組みを実践。市が運営する福祉・保健拠点『地域ケアプラザ』と連携しながら、子どもが安心して暮らせる街づくりを目指している。

私が取り組むSDGs

  • 2飢餓をゼロに

    目標2

    飢餓をゼロに

  • 3すべての人に健康と福祉を

    目標3

    すべての人に健康と福祉を

私がいま力を入れているのは、横浜市にある認可保育園『スターチャイルド 白楽ナーサリー』で取り組んでいる『子ども食堂』の運営です。『子ども食堂』とは、地域の子どもたちを対象に低額で食事を提供する食堂のこと。『栄養バランスがとれた食事』そして、『みんなと楽しく食べられる空間』を通して、周辺地域の子どもたちに居心地の良い空間を提供したいと考えています。

現在は毎週木曜日の18時半~19時半で実施。1回あたり300円の参加費をいただき、子どもたちに栄養バランスがとれた食事を提供しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、参加者が増えず思うように進まないこともありましたが、ここからが本当の意味でのスタートです。『子ども食堂』の認知度を高め、食の提供を通じ、地域全体で子育て支援への貢献を目指します。

向き合う社会課題

私が認可保育園『スターチャイルド 白楽ナーサリー』の施設長に就任したのは、園がオープンした2018年の4月のこと。地域に根付いた愛される保育園をつくろうと期待に胸を膨らませ準備を進めていた頃、会社から『子ども食堂』のお話をもらいました。

核家族化や共働きの家庭、貧困世帯の増加によって、「孤食」を余儀なくされる子どもたちがいること。日々の食事については各家庭での話になりますから、問題として表面化しにくい。本当に食事に困っているのか、どのような状況でご飯を食べているのか、外からでは分からないことが多い中、私たちが『子ども食堂』を始めることで、このような社会課題を解決する手助けをしていくという内容でした。

私自身も、この機会に改めて子どもの「食」について考え、『子ども食堂』の必要性を強く感じるようになりました。そして、食の支援が必要な子どもと保護者の方がいつでも駆け込みやすい温かな場所を提供していきたいと思うようになったのです。

解決に向けた取り組み

白楽ナーサリーの開園と共に『子ども食堂』の準備を進める中で、あわせて進めていったのは近隣住民への告知です。『子ども食堂』について全く知らない方も多い中で、どのような取り組みを行なっているのか、なぜ始めるのかといったことから、伝えていく必要があると感じていました。

そこで、自治会、役所、地域子育て施設など、子育て世代と関わりの深い方々に対し、『子ども食堂』について説明会を実施。他にも、説明内容をまとめた資料を配布するなど、広報活動に注力していきました。みなさん「良い取り組みですね!」と賛同してくださり、地域の広報誌で『子ども食堂』を紹介したり、施設にポスターを掲示したりと親身にサポートしていただきました。

『子ども食堂』は保育園内の2階に10畳ほどのラウンジを開設し実施することになりました。このラウンジは『子ども食堂』はじめ、地域活動や保育講座などにも利用できる地域交流ラウンジです。木の温もりにあふれ、どこかホッとできるような居心地の良い空間に仕上がったと思っています。ここでは、子どもたちがご飯を食べながら、「今日あった出来事」を楽しそうに話している。そんな家族のような時間を過ごせたらと考えていますね。

確かな手応え、見えてきた成果

保育園を探されている保護者の方が、『白楽ナーサリー』を見学にいらっしゃった際には、あわせて『子ども食堂』についてもお話をしています。多くの方が興味を持ってくださり、“自分の子どもも利用したい”“素敵な空間ですね”といった言葉を寄せてくれます。ゼロから携わったことに対して、前向きな反応をいただけることは素直に嬉しいですし、社会課題に対して微力ながら貢献できているのだと喜びを感じる瞬間ですね。

また、過去には『白楽ナーサリー』に通う園児のお兄ちゃんに『子ども食堂』をご利用いただいたことがありました。毎週木曜日は保護者の方が残業をされるので、小学3年生のお兄ちゃんが一人で夕飯を食べることがないように、と半年ほど通ってくださいました。その子も最初は緊張で固まっていたのですが、園児たちから“お兄ちゃん”と声をかけられ、だんだんと柔らかな表情に。保育士とも話をしながら、楽しんでご飯を食べている姿が特に印象に残っています。保護者の方も安心して仕事ができると喜んでくださって、本当に嬉しかったですね。子どもへの食支援だけでなく、保護者の方の働く支援にもつながっていると感じた瞬間でした。

私が目指す未来

運営を進める中で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け思うように進まない場面もありましたが、これからが新たなスタートだと私は考えています。まずは、地域の方々に必要とされ、子どもたちや保護者の方が気軽に、遊びに来るような感覚で利用できる『子ども食堂』を目指していきたい。そして、居心地の良い空間での“楽しい食事”を通じて、子どもたちと保護者の方の生活がより豊かなものになれば、と願っています。

また、もう少し広い視点でいうと『子ども食堂』だけでなく、さまざまな取り組みを強化し、地域交流をこれまで以上に増やしていきたいと考えています。現在は、保育園でも『地域子育て支援プログラム』として、育児講座や相談会、交流保育といった取り組みを実施。他にも、市が運営する福祉・保健拠点『地域ケアプラザ』で開催される交流広場に参加し、月1回の育児相談会を行なっています。

私が目指しているのは、子育てを地域全体で見守っていける。そんな環境づくりです。子育てで困っている方々が、“安心して頼れる社会”をつくっていけたらと思いますね。

※2021年11月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものです。