【教育】テクノロジーで教育を変革。「全体最適」から「個別最適」な学びへ。~これが私の挑戦

【教育】テクノロジーで教育を変革。「全体最適」から「個別最適」な学びへ。~これが私の挑戦

ヒューマンアカデミー株式会社 
全日制教育事業部 教学室 室長

乾 伸次(Shinji Inui)

1996年、教育事業を行うザ・ヒューマン株式会社(現ヒューマンアカデミー株式会社)入社。職業訓練校大阪ヒューマンアカデミーの営業担当を経て、全日制専門校「総合学園ヒューマンアカデミー」に異動し、学生募集を担当。その後、校舎運営責任者、西日本エリアの本科運営責任者、全国の本科運営責任者として活躍し、現在は、総合学園ヒューマンアカデミー全体の教学室室長として、学習効果の向上やCS向上を目的とした商品開発、学校運営、経費管理、講師マネージメントなどを幅広い業務に従事。

私が取り組むSDGs

  • 4質の高い教育をみんなに

    目標4

    質の高い教育をみんなに

私は、全国に18校舎展開する全日制専門校「総合学園ヒューマンアカデミー」の教学室室長として、質の高い教育を一人でも多くの学生に提供することを目指し、「教育のICT化」に力を注いでいます。
具体的なところでは、これまでの「対面学習」に加えて、新たな学習方法や手段、コンテンツ開発を推進しています。全学生が個人PCやタブレットを活用したり、映像教材を制作し自宅でも復習できる学習環境を整えたりなど、さまざまな取り組みを実施。このような「教育のICT化」を通じて、ヒューマンアカデミーを選んでくださった学生が描く、それぞれの夢を実現できるよう、細やかにサポートをしていきたいと考えています。

向き合う社会課題

社会的な背景として、2019年頃、政府による「GIGAスクール構想」が本格的に動き出しました。「GIGAスクール構想」とは、1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを整備することで、多様な子どもたちの資質・能力が育成できる教育ICT環境を実現する、というもの。ヒューマンアカデミーでも積極的にその準備を進めていた最中、2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大。教育現場においてもオンライン授業が一気に定着し、 “対面での授業ができないから”という消極的な意味合いでの選択ではありましたが、結果として「教育のICT環境実現」は大きく前進することになりました。

しかしながら、これまで対面授業で課題とされていた「学生によって学習理解度が異なる問題」「個人に最適化された教育の提供」などは残されたまま。講師はレベルの異なる学生たちに対して、中心層を狙って授業を行なわざるを得ない状況がありました。全員に同じような授業を展開していては、質の高い教育を実現することはできない問題があったのです。

ハード面での環境は整いつつあるけれど、本質的な意味での“教育のICT化”は進んでいない…。改めて、デジタルの力をうまく活用し、個々のレベルに合わせた学習提供、学生の理解度を深める仕組み、その成長過程の見える化…など「新しい教育のかたち」を創り出していかなければならない、と痛感するようになったのです。

解決に向けた取り組み

▲全校舎に大型モニターを設置、学生一人ひとりにPCを完備

ヒューマンアカデミーでは2020年度より本格的に全校舎におけるWi-Fi回線の強化、大型モニターの設置などハード面の整備が進んでいくと同時に、コースや授業内容などの商品企画にも着手。デジタルを活用したカリキュラム・授業運営方法を定め、実際に導入し検証。そして改善するところまでトータルで携わってきました。たとえば、講師のデモンストレーションなど、繰り返し学習する必要がある内容については積極的に映像化し、一人ひとりが自分のペースで効率的に学べる環境を整えています。

こうしたなかで、個別最適な授業を提供する上で何より重要なのが、“個々の学習成果を的確に把握すること”。そして、ICT化を推進する中で一番の壁となったのは、この個々の学習成果の「判定方法」でした。判定という意味では、「AI判定」などがありますが、私たち総合学園ヒューマンアカデミーが展開するマンガ、演技、ヘアメイク、ゲーム開発など、明確な正解がない実技や作品制作が主なコースにおいては、導入がとても難しい。講師が一人ひとりの学習成果を判定し、それに基づく学習計画を作るにも限界があります。ではどのようにして学生一人ひとりの学習成果や「得意」「苦手」を判定・見える化し、最適化された学習提供につなげるか…メンバーと話し合いを繰り返し、少しずつ形にしていきました。

確かな手応え、見えてきた成果

▲科目の内容を身につく「能力」で分類したレーダーチャート イメージ図

その中である方法が見えてきました。それは、各科目の内容を、身につく「能力」で分類し直し、それをデジタル判定できる仕組みをつくり、結果をレーダーチャートで表示する方法です。

これまでは「デザイン基礎:80点」「デッサン演習:60点」など科目別の成績評価が一般的でしたが、「基本的な色彩知識をもってデザインができる:70点」「風景を的確に模写することができる:40点」というように、「能力」に分解して判定します。これによって、ひと目で「自分に足りない能力が何なのか」を認識できる状態になる。結果、学生自身の学習効率も向上し、学校側もその能力に対して適切なVOD教材、補講、レベル別授業などをスピーディーに設定することが可能です。個人レベルでの目的やニーズによりマッチした学習を提供できると考えています。

校舎設備、授業、学習成果の判定、最適な学習提案など…、教育のあらゆる側面にデジタルを導入することによって、 “ぼんやりとしていた全体最適な教育”が、“輪郭がはっきりとした個別最適化された学び”に変化。テクノロジーを活用した教育変革に、大きな手応えを感じています。

私が目指す未来

私たちが目指すのは、学びの機会、時間、場所などに縛られることなく、“将来の夢”に向かう学生たちを適切にゴールへと導いていくことです。ここまでお伝えしてきた取り組みは、正式運用に向けて加速が進んでおり、学生それぞれの技術レベル、業界における就職率など、あらゆる面での効果が期待できると確信しています。

そして、私が「教育のICT化」に取り組む中で大事にしているのは、実現までの“スピード”です。なぜなら、目の前の学生にとって、「今」しかないからです。5年後に向けて…10年後には良くなる…という感覚でいてはいけない。通常の2倍・3倍のスピード感を持って、プロジェクトを進めていかなければと強く思っています。そして不平等がなく、質の高い学習環境を提供できる社会を創っていきたいと思います。

※2021年10月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものです。