【教育】言語による情報格差をなくす。外国籍の方が取り残されない日本社会を~これが私の挑戦

【教育】言語による情報格差をなくす。外国籍の方が取り残されない日本社会を~これが私の挑戦

ヒューマングローバルコミュニケーションズ株式会社 
営業部多言語翻訳課 課長

今村 友美(Tomomi Imamura)

大学時代のアメリカ留学経験を活かし、自ら翻訳サービス事業を手掛ける会社を立ち上げる。官公庁・大学・企業からの依頼を受け、約30言語の翻訳サービスを提供。事業をより拡大するべく2019年ヒューマングローバルコミュニケーションズ株式会社に同事業を事業譲渡するとともに、同社に入社。現在は営業部多言語翻訳課 課長として、世界各国で活躍する翻訳者200~300名をマネジメントする。

私が取り組むSDGs

  • 8働きがいも経済成長も

    目標8

    働きがいも経済成長も

  • 10人や国の不平等をなくそう

    目標10

    人や国の不平等をなくそう

私が取り組んでいるのは、官公庁・大学・企業が発信する専門資料の翻訳サービスです。「翻訳」と聞くと英語や中国語が多いイメージがあるかもしれませんが、私たちはメジャーな言語だけでなく、ミャンマー語、ベトナム語、ヒンディー語、モンゴル語、クメール語、ポーランド語などあまり目にすることのないマイナー言語まで手掛けており、その数は約30言語にも及びます。企業や行政が展開する規則や資料などを翻訳・提供することで、日本で暮らす外国籍の方々の不安を取り除く。日本で安心して働き、楽しく豊かに暮らすことができる生活環境・就労環境の構築に取り組んでいます。

向き合う社会課題

私たちは日頃多くの情報から、自身にとって必要な情報を選択し、日々の暮らしを便利なものにしています。大きなところでいえば、行政サービスがそれに当たるでしょうし、身近なところでは、かかりつけの医療機関や近隣の商業施設が発信している有益な情報があると思います。

しかしながら、日本で暮らす外国籍の方々に目を向けてみたとき、そういった情報が行き届いていないと感じる場面が多くあると考えています。たとえば、日本語では10ページで説明されていたものが、英語や中国語になるとわずか1ページ程度になってしまうことがある。しかも、外国籍の方々は、英語や中国語が堪能な方ばかりではありません。場合によっては、日本ではあまり目に触れることがないようなマイナー言語しか分からないという方もいらっしゃいます。それにもかかわらず、学校の入学案内や子育て情報といった非常に重要なお知らせが、ポイントだけがまとめられた英語、中国語のみで、ミャンマー語、ベトナム語といった言語を使う人々には届いていないことが多くあるのです。

情報の不平等によって、日本で暮らす外国籍の方々が取り残されてしまうのではないか…。そんな社会課題を感じ、多言語による翻訳サービスを提供することで、官公庁・大学・企業と、日本で暮らす外国籍の方を「つなぐ」役割を担うことが、私の使命だと考えるようになりました。

解決に向けた取り組み

現在、私たちの翻訳サービス事業をサポートしてくださる翻訳者の方は、世界各国にいらっしゃって、その数は200~300名ほどになります。英語や中国語などメジャーな言語だけでなく、多言語翻訳に一括対応できる体制を目指していく中でこれだけの規模になりました。
英語を介さずに日本語からワンストップで各言語の高品質な翻訳物を納品することができるので、依頼いただく企業にとっても負担が少なく、良い体制が築けているのではないかと思っています。

とはいっても、簡単にここまでの規模にできたわけではありません。ミャンマー語、ベトナム語、ヒンディー語、モンゴル語、クメール語など、世界各国の言語をネイティブとする翻訳者の方々と仕事を進めていく中で、文化や価値観の違いにぶつかることやこちらの意図が上手く伝わらないことも幾度もありました。そういったときには、文化的背景などを理解した上で丁寧に説明をしたり、一人ひとりの仕事の進め方や得意分野などを考慮した上で細かく仕事内容を調整したり…。何よりもそれぞれの翻訳者の方を尊重し、皆が誇りを持って仕事に向き合える環境を少しずつ作り上げてきたように思います。そして、それは私だけではなく、翻訳者をアサインするコーディネーターや上がってきた原稿をチェックする校正担当の方も同じ考え。翻訳者の方と丁寧にコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていることが、高品質な翻訳物制作につながっていると考えています。

確かな手応え、見えてきた成果

ある企業から外国籍の方の採用を背景に、就業規則の翻訳依頼を受けたときのお話です。その企業が考えていたのは、英語、中国語などメジャー言語での翻訳。しかし、私たちが多言語翻訳サービスを提供していることを知り、それであればもう少し多くの言語での翻訳を、とお声がけくださったのです。そして、その結果、多くの外国籍の方の就業につながったとのことでした。自身がどのような条件・規則の中で働くのかを理解することは、安心して働く上で欠かせない要素とも言えます。安心できる就労環境を生み出すことで、就業機会を増やすことができた。そして、それは日本のビジネスの発展につながることなのだと思えた出来事でしたね。

また、一方で私たちが翻訳した資料によって、情報の受け手である日本で暮らす外国籍の方々から“分かりやすい”“便利だった”という声をいただけたときも、嬉しさを感じる瞬間です。過去には、ある病院でマイナー言語しか話せない患者さんにも安心して受診いただけるよう、「受診時の注意点」を多言語で翻訳したこともありました。外国籍の方々の命や健康を守ることにつながる、そんな価値ある取り組みに携われたことを誇りに感じています。

私が目指す未来

私は、日本で暮らす全ての外国籍の方々が、日本語を話す人々と同じ量・同じ質の情報を享受できる社会を目指していきたい。翻訳サービスを通じて、そのためのお手伝いをしたいと思っています。

そして、私たちの取り組みが広がっていくことは、「インクルージョン」につながると考えています。「インクルージョン」とは、多様な価値観や個性を互いに認め合い、包括し、一体となっている状態を表す言葉です。これまで情報を得られていなかった方々が得られるようになることで、国や企業に対して、新しい視点での声が寄せられるようになる。それを受けて、国の施策や企業のサービスの質がさらに上がっていき、幅も広がっていく可能性があると思うのです。そのようにして多様な文化や価値観を受け入れ「融合」させた社会をつくることで、日本という国はもっと進化していける。日本の明るい未来へとつながっていると信じ、今後の仕事に向き合っていきたいと思います。

※2021年10月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものです。
※2024年3月1日に、ヒューマングローバルコミュニケーションズ株式会社はヒューマンアカデミー株式会社を存続会社とし合併いたしました。