ヒューマンスターチャイルド株式会社
スターチャイルド事業部 施設運営1課 課長
酒見 純子(Junko Sakemi)
保育士・幼稚園教諭の経験を経て、保育士の派遣を手がける企業に勤務。その後、神奈川県を中心とした首都圏エリアに認可保育園27園、事業所内保育所5園の運営を手掛けるヒューマンスターチャイルド株式会社に入社。現在は、認可保育園の施設運営管理を担当。園長・職員と共に協力しながら、現場の問題・課題を解決。地域社会に根差した保育園づくりを目指す。 ※保育園数は2021年4月1日時点
私が取り組むSDGs
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目標4
質の高い教育をみんなに
私が取り組んでいるのは、ヒューマンスターチャイルドが運営する認可保育園の施設管理全般です。実際に子どもたちを保育・指導するのは現場の職員ですので、私は担当する保育園を定期的にまわりながら現場の問題や課題を解決する役割を担っています。
子どもたちがのびのびと楽しく過ごせる園づくりを目指す中で、新たな試みとして取り組んできたことがあります。それは、2016年より認可保育園『白楽(はくらく)ナーサリー』で実施してきた、“神奈川大学との産学共同研究”です。神奈川大学の学生と園児が交流できる環境を提供することで、大学と共に地域コミュニティの貢献・活性化を目指してきました。
向き合う社会課題
私が保育士・幼稚園の教諭など、これまで保育に携わってきた中で感じていたのは、「子どもへの理解が得られない」「子どもに目が向かない」社会状況があるということ。とても胸が痛い話ではありますが、保育園からの声がうるさいと言われてしまったり、まだまだ育休取得が難しい会社も多かったり…。地域全体で子どもを育てていく視点が失われているように感じています。
その理由の一つが、子どもと接する機会の少なさではないでしょうか。核家族が中心の現代においては、子どもと接したことがない、どうやって向き合ったらいいのか分からない…そうしたまま大人になるケースが多いのではないかと思うのです。だからこそ、私たちが運営する保育園では、積極的に地域の方々と交流していく場所でありたい。それが、社会全体で子どもを育てていくことにつながると考えています。
解決に向けた取り組み
地域交流を活性化させることで、多くの人たちが子どもと接する機会を増やせたら…そんな思いで始まった取り組みの一つが、“神奈川大学との産学共同研究”です。月に2回、大学生と交流する機会を設け、一緒に園庭で遊んだり、反対に園児が大学のグランドに遊びに行かせてもらったりしています。
今でこそある程度の形になりましたが、スタートした当初は本当にゼロからの状態でした。大学の教授や園長と話をしながら、学生と園児がどのように関わっていくべきなのか、そこにはどのような「運動遊び」があるとよいのか…何度も何度も対話を重ね、少しずつ形にしていきました。失敗もたくさんありましたよ。いつだったか学生が設計した図をもとに、子どもたちが基地を作ろうとしたことがあったのですが、子どもたちが思った以上に興奮してしまって(笑)。途中の状態で終わってしまいました。失敗と成功を繰り返しながら、学生と子どもたちの心が少しずつ通い合っていたように思います。
確かな手応え、見えてきた成果
2年ほど、取り組んでいく中で見えてきたのは「大学生の子どもに対する向き合い方」の変化です。始まったばかりの頃は、どのように関わっていいのか分からず、戸惑う姿が見られました。私たち職員の指示を待ってから、子どもたちに声をかけたり、遊んだりすることが多かったのですが、近年においては学生たちもとても自然体です。
たとえば、大学から保育園までの帰り道は歩いて15分程度なのですが、サッと子どもの手を引いて歩いてくれたり、車が来れば自ら車を止めて子どもの歩行をサポートしてくれたり…。たくさんの時間を一緒に過ごすことで、子どもたちに対して温かい目が向くようになっているのだと、本当に感動しました。私が目指している世界が見えたような気がして、とても嬉しかった。熱いものがこみ上げてきた瞬間でしたね。
私が目指す未来
数年かけて土台を作り、ここから広げていこうというタイミングで、新型コロナウイルス拡大の影響を大きく受けてしまったことは本当に残念でなりません。現在は、“オンラインでの交流”をテーマに何ができるのかと模索しているところで、先日は職員が学生にむけてオンライン講演を行いました。学生からもとても好評で、教育内容の質向上に対しても貢献することができたのではないか、と感じています。また、これまでの共同研究の成果については、日本保育学会への発表を予定しています。保育事業に携わる関係者の方はもちろん、日々子育てに向き合っている保護者の方にも役立つ情報を届けていけたらと考えているんです。
今後は神奈川大学との共同研究で得られた成果を活用しながら、他にも地域の方々と交流できる園をもっともっと増やしていきたいですね。子どもたちや保護者の方が周りに気を遣うのではなく、思いきり遊び、そしてその様子を温かく見守る大人たちがいる。“子どもたちは未来の宝物”という考えが、地域全体で持てるような、そんな優しい社会を作っていきたいと思います。
※2021年8月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものです。