日本の映画監督に憧れ、日本で映像作家を志す中国人の僕が
夢に近づくために実践してきた5ルール

日本の映画監督に憧れ、日本で映像作家を志す中国人の僕が<br>夢に近づくために実践してきた5ルール

ヒューマンアカデミー日本語学校卒業生 
テレビ番組制作プロダクション アシスタントディレクター

徐 子豪

中国・黒竜江省の省都ハルビン市で生まれ、中学・高校時代はカナダで過ごす。日本人の友人の影響で日本のドラマや映画に夢中になり、高校生の頃から自主映画を制作。カナダの大学に進学したものの、「是枝裕和監督のような映画監督になりたい」という夢をあきらめられず、中退して来日。2019年1月にヒューマンアカデミー日本語学校に入学し、進学コース修了後、東放学園映画専門学校映画制作科へ進学。卒業後の2022年4月、是枝監督が独立前に働いていたテレビマンユニオンに入社。現在は『食彩の王国』(テレビ朝日系)のアシスタントディレクターとして番組制作に携わっている。

「なりたい自分」をつくる5ルール

日常の何気ない生活描写の中で細やかな感情を表現する日本の映画やアニメーションが大好きで、日本で映像制作の仕事に就きたいと長いカナダでの長い留学生活から一新。
新天地日本で1からその夢に近づくために、日々心がけている5つのルールを挙げてもらいました。

① 好奇心を大切にする

映画や日本語を学ぶには、好奇心がないと幅広い知識を身につけることができません。僕は好奇心を大切にし、自分が少しでも興味を抱いたことについては深く探求することをモットーにしてきました。いろいろなことに好奇心を持ち、電車に乗っているときも、スマホをいじるのではなく、周囲の人の表情や話していること、街の風景や看板など、外の世界に目を向けます。そうして常に好奇心のアンテナを張っておき、観たい映画や読みたい本など、気になる情報を目にしたら即座にスマホにメモします。いま仕事で担当している『食彩の王国』は、日本の食材をテーマに、生産者や料理人など、その食材に関わる人たちをじっくり取材します。地方ロケも多く、撮影を通して日本各地の自然の風景や食文化の奥深さにふれることができるので、とても好奇心を刺激されます。

気になること、思い浮かんだものは英語・日本語・中国語で即座にメモ。

② 忍耐力を身につける

夢を叶え、「なりたい自分」になるために、忍耐力はかなり大事だと思っています。忍耐力がなければ、困難にぶつかったとき簡単に諦めることになってしまいます。仕事でも勉強でも、つらいことや嫌なことがあっても耐え、できるようになるまで粘り強く頑張ることが、成功への道です。

日本人の素晴らしい点の1つは、忍耐力が強いことだと思います。他人を尊重し、自分の感情をしっかり抑制して、つらいことにも耐える。我慢する能力が高いのです。日本人を見習って、もっと忍耐力を身につけたいと思っています。いまは学生時代に目標としていた映像制作の仕事に就くことができましたが、つらくて辞めたくなることもあります。そんなときは「いまこそ忍耐の時だ。いまやるべきことをしっかりやって次のステップに行けば、きっと乗り越えられる」と自分に言い聞かせて、頑張っています。

③ 自分を信じ、自分に自信を持つ

いつも自分を信じることが大事です。僕の場合、高校時代にマジックと映像制作に夢中になり、自分で2つのサークルを立ち上げ、いろいろな活動をしたことが、自信につながりました。その自信があったからこそ、大学入学後に進路を軌道修正し、日本に留学してやり直すことができたのだと思います。

ちなみに、英語には「Fake it until you make it」という格言があります。直訳すると「うまくいくまでは、うまくいっているふりをする」。つまり、うまくいかないときでも、自信があるふりや成功したふりを続けていれば本当にそうなる、人生で欲しいものを手に入れることができる、という意味です。実際、自信がなくても、自信のあるふりをしていると自信があるように思えてきます。そうやって、いい方向へ自分をだますことも大切だと思っています。

④ 常に物事を観察する

好奇心の話とも少し重複しますが、常に物事を観察することを大事にしています。身の回りの物事を観察することで、さまざまなアイデアやヒントが得られ、考えが深まり、自分もどんどん成長することができます。僕はカメラも趣味で、日常生活の中で「いいな」と思うシーンに出合うと、アイデアスケッチ的に写真を撮っています。撮りためた写真は、自分の映像作品を作るとき、物語やシーンのイメージを広げるためのネタとしても役立つと思います。

⑤ 落ち込んだり悩んだりしたときは、自己対話で自分を励ます

自分を励ますことで勇気が湧き、できないこともどんどんできるようになります。僕は大学に入学した直後、映画監督になる夢に向かって進まなかったことを後悔し、将来を思い悩み、うつ気味になった時期がありました。そのとき、メンタルの先生に教わった解決策が、自己対話です。いま自分が感じていること、思い悩んでいることを声に出して1人で話し、それに対する答えや励ましを自分に語りかけるのです。自己対話をしているうちに自分の思いや考えが明確になって気持ちがスッキリし、「大丈夫だよ」「心配ないよ」と声に出して自分で自分を励ますと、元気が出てきます。

いまも、ストレスがたまったときや、自信を失ったとき、迷いや不安、悩みがあるときは、ブツブツと自己対話をくり返しています。自分自身とコミュニケーションをとり、ネガティブ思考の悪循環に陥るのを防ぐ意味でも、とても効果的な方法だと思います。

今後の展望

いまの職場では、日々の仕事を通して映像制作のスキルを磨き、経験を積むことができます。仕事に真剣に取り組むことはもちろんですが、将来の夢はやはり、自分で撮った映画が世界中で評価されること。来年あたりから、専門学校の頃の友人たちと、もう一度脚本を練り直して自主制作の映像作品を撮り始めたいと考えています。カナダの映画祭に携わっている知人もいるので、作品が完成したら英語の字幕をつけて映画祭に出品できるといいな、と思っています。

※2022年10月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものとなります。