ヒューマンタッチ

ヒューマンタッチ総研独自分析 建設技術者の人材需給及び建設市場の動向 ~2020年のまとめと2021年の動向を考察~

人材紹介事業を行うヒューマンタッチ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:髙本和幸、以下「ヒューマンタッチ」)が運営するヒューマンタッチ総研は、建設技術者の人材需給および建設市場の動向について、2020年のデータをまとめるとともに2021年について考察をまとめました。

【本件のポイント】

  • 2020年は縮小傾向の建設市場を背景に建設技術者の人材需要は低下
  • 建設技術者の有効求人倍率は、低下傾向が続くが依然として高水準であり、人材不足の状況は続く
  • 2021年はコロナ禍の影響により建設市場はさらに縮小すると思われるが、建設技術者の不足は一定レベルで続く

■2020年は、建設技術者の需要が減少傾向で推移

2020年のハローワークにおける建設技術者の有効求人数と有効求職者数の対前年同月増減率の推移を見ると、企業の求人意欲を示す有効求人数は、すべての月で前年同月を下回り、建設技術者への人材需要は、年間を通じて低下していたことがわかります(図表①)。最初の緊急事態宣言が発出された4月から5月にかけては、特に落ち込み幅が大きくなっていますが、その後は徐々に回復傾向になっています。一方、有効求職者数は、6月以降前年同月を上回っており、コロナ禍で不安定な雇用環境を背景に人材供給数は上向きとなっています。

 

【図表① 有効求人数と有効求職者数の対前年同月増減率の推移】

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

 

■有効求人倍率は低下傾向も依然として高水準

有効求人倍率の推移を見ると、2月以降は前年同月を下回り、低下傾向が続いていますが、依然として5倍を超える高水準となっており、建設技術者への需要が低下する中においても人材不足の状況は続いていると言えます(図表②)。

 

【図表② 有効求人倍率の推移】

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

 

■建設業の市場規模は縮小傾向

建設市場の動向を見ると、建設業の売上高を示す建設工事の出来高(工事請負金額のうち施工が完了した部分に相当する金額)は1月と3月以外はすべての月で前年同月を下回っており、コロナ禍の影響もあり建設市場は縮小傾向であったことがわかります(図表③)。

 

【図表③ 建設工事出来高の推移】

出典:国土交通省「建設総合統計」より作成

 

■建設市場は公共工事が下支えするも縮小傾向

2021年の動向を予測するために、将来の売上高動向を示す先行指標となる手持ち工事高(工事請負金額のうち、未着手の工事に相当する金額)の推移を見ると、減少傾向ではありますが、8月に前年同月を下回った以外はかろうじて前年同月レベルはキープしています(図表④)。民間、公共別に見ると民間工事が減少する中、公共の工事が前年を上回っており、建設市場を下支えしています(図表⑤)。

 

【図表④ 手持ち工事高の推移】

出典:国土交通省「建設総合統計」より作成

 

【図表⑤ 民間・公共別の手持ち工事高の対前年増減率の推移】

出典:国土交通省「建設総合統計」より作成

 

次に、同じく将来の売上高動向を示す先行指標となる元請受注工事高の推移を見ると、最大の受注月である3月に前年同月増減率▲21.6%と大幅に減少し、その後も減少傾向が続いています(図表⑥)。
民間と公共の受注別に見ると、民間からの受注が8月以外はすべての月で前年同月を下回っているのに対して、公共からの受注は1月と8月以外は前年同月を上回っており、比較的順調に推移しています(図表⑦)。
手持ち工事高は前年ぎりぎりの水準であり、受注高については公共工事が下支えしながらも民間工事の減少により前年割れとなっている状況からは、2021年の建設市場は縮小傾向になる可能性が高いと考えられます。

 

【図表⑥ 元請受注工事高の推移】

出典:国土交通省「建設工事受注動態統計調査」より作成

 

【図表⑦ 民間・公共別の受注工事高の前年同月増減率の推移】

出典:国土交通省「建設工事受注動態統計調査」より作成

 

■ヒューマンタッチ総研所長・髙本和幸(ヒューマンタッチ代表取締役)のコメント

2020年は東京オリンピック・パラリンピック関連の需要が減少するとともに、コロナ禍による民間建設投資減少の影響もあり、建設市場は縮小傾向で推移し、それに伴い建設技術者への人材需要も低下しました。しかし、人材需要が低下したとはいえ、依然として有効求人倍率は高水準であり、建設技術者の人材不足の状況は続いています。
2021年については、政府等の公共機関による建設投資が堅調に進む中、コロナ禍の影響で民間の建設投資が弱含みで推移すると思われ、建設市場全体としては縮小するのではないかと考えられます。それに伴って建設技術者への人材需要もさらに低下することが考えられますが、2021年1月の建設技術者の有効求人数を見ると、前年同月比1.5%増、新規求人数は同15.3%増と増加に転じています。また、厚生労働省の「労働経済動向調査」による建設技術者の過不足判断DIを見ると、8月調査の44ポイントから11月調査では53ポイントに上昇しています。
これらの状況に加えて、現状における建設技術者の需給ギャップの大きさ、生産年齢人口の減少が続くこと等を踏まえると、今後のコロナ禍による民間建設投資の減少度合いにもよりますが、建設技術者の不足は一定レベルで続くことも考えられます。
*「労働者過不足判断DI(Diffusion Index)」:不足と回答した事業所の割合から、過剰と回答した事業所の割合を差し引いた値で、値が大きいほど人材不足感が高いことを表している。

 

■ヒューマンタッチ総研とは

「ヒューマンタッチ総研」は、ヒューマンタッチ株式会社が運営する、建設業界に関する各種データを基に将来の姿を予測する研究所です。
「ヒューマンタッチ総研」は、建設業界の人材動向を中心に市場動向、未来予測などの調査・分析を行い、 独自調査レポート や定期的なマンスリーレポート、そして建設ICTの最新ソリューションを紹介する各種セミナーの企画・運営など、建設業界に関わる様々な情報発信をしています。
建設業界の人材不足を改善するために、 ICT導入による「生産性向上」や魅力ある業界への転換としての「働き方改革」を推奨し、建設業界に関わる各種データや業界を超えた様々な情報の調査・分析から、建設業界の明るい未来につながる発信をしてまいります。
●ヒューマンタッチ総研WEBサイト:https://kensetsutenshokunavi.jp/souken/

■ヒューマングループについて

ヒューマングループは、教育事業を中核に、人材、介護、保育、美容、スポーツ、ITと多岐にわたる事業を展開しています。1985年の創業以来「為世為人(いせいいじん)」を経営理念に掲げ、教育を中心とする各事業を通じて、労働力不足、高齢化社会、待機児童問題など、時代とともに変化するさまざまな社会課題の解決に取り組み、独自のビジネスモデルを展開してきました。
人と社会に向き合い続けてきたヒューマングループは、いま世界全体で達成すべき目標として掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んでいきます。SDGsへの貢献を通じて、「為世為人」の実現を加速させ、より良い社会づくりに貢献していきます。
●ヒューマンホールディングスWEBサイト:https://www.athuman.com/

ヒューマンタッチ株式会社 会社概要

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