ヒューマンタッチ

ヒューマンタッチ総研が独自分析 建設業主要各社の2019年3月期決算と20年3月期予想から見る市場動向

 ヒューマンホールディングス株式会社の事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:髙本和幸、以下「ヒューマンタッチ」)が運営するヒューマンタッチ総研は、総合工事業(ゼネコン)、土木工事業、電気設備工事業、管工事業、プラントエンジニアリング業、住宅建設業の6業種に分けて、2019年3月期通期決算から見る市場動向をまとめました。対象は3月期決算で18年3月期売上高の上位各10社です。

【本件のポイント】
・6業種別主要上場企業各10社の2019年3月期通期の決算から見る建設市場動向をまとめた

・2019年3月期の売上高実績は5業種で前期を上回り、市場規模は拡大傾向、利益も高水準

・ゼネコンは減益ながら売上高は前年同期より増加し、手持ち工事の消化は順調に進行

<全体概況>
■2019年3月期の売上高実績は5業種で前期を上回り、市場規模は拡大傾向、利益も高水準
 19年3月期通期の各業種主要10社合計の業績(連結)と20年3月期の業績予想(連結)をまとめると、19年3月期の売上高は、プラントエンジニアリング業を除く5業種で前期を上回り、各業種ともに市場規模は拡大傾向にあると考えられます(=図表①)。
 経常利益は電気設備工事業、管工事業、住宅建設業の3業種で前期を上回り、土木工事業もほぼ前年並みを確保しており、利益面でも高水準を維持した決算であったと考えられます。
 
 20年3月期についても、プラントエンジニアリング業を除く5業種では売上高は前期を上回る予想になっており、市場規模は拡大傾向が続くと見込まれます。
 経常利益についても、プラントエンジニアリング業が黒字に転換するのをはじめ、電気設備工事業と住宅建設業では前期を上回ることが予想されています。一方、前期を割れる予想の業種もあり、明暗が分かれると見込まれています。
 
【図表① 各業種主要10社合計の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の業績予想】
HT_20190605_001.jpgのサムネイル画像出所:各社の2019年3月期決算短信より作成

以下、業種別に主要10社の決算結果を見ていきます。

 
<総合工事業(ゼネコン)>
■10社中9社が増収、うち6社が増収増益も、利益面で苦しく
 総合工事業(ゼネコン)主要10社の19年3月期決算は、業界トップの大林組が売上高を初の2兆円台に乗せるなど好調な結果となった企業が多く、10社中9社が増収、うち大林組、清水建設、五洋建設、戸田建設、前田建設工業、三井住友建設の6社が増収増益となりました(=図表②)。首都圏再開発工事を中心とした手持ちの大型工事の消化が順調に進んで完成工事高が増加しているようです。
 
 20年3月期の業績予想についても、底堅い民間建設需要、国土強靭化関連の公共投資増加を背景に7社が増収、うち清水建設、五洋建設、安藤ハザマの3社が増収増益を予想しています。一方、減益を予想する企業が7社あるなど、収益性の面では厳しい業績になることが見込まれています。
 
【図表② ゼネコン主要10社の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の予想値】
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出所:各社の2019年3月期決算短信より作成

<土木工事業>

■10社中7社が増収も、利益面でやや苦戦

 土木工事業主要10社の19年3月期決算は、豊富な手持ち工事の消化が順調に進んで7社で増収となっていますが、増収増益となったのは日本道路、川田テクノロジーズ、ライト工業の3社にとどまっています(=図表③)。資材コストや人件費の高騰等の影響で、経常利益については6社が前期割れとなっており、利益面ではやや苦しい決算と言えます。

 特に道路舗装大手5社(NIPPO、前田道路、日本道路、東亜道路工業、世紀東急工業)について見ると、日本道路以外の4社が減益、うち3社は2ケタ減と大幅な減益となっており、利益面での苦戦が特に目立ちました。



 20年3月期の業績予想については10社中8社が増収、うちNIPPO、前田道路、東鉄工業、東亜道路工業、ライト工業の5社が増収増益と予想しています。一方、利益面では減益予想が5社と、苦戦が続く企業もありそうです。

【図表③ 土木工事業主要10社の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の予想値】
HT_20190605_003.jpg出所:各社の2019年3月期決算短信より作成

<電気設備工事業>
■10社中9社が増収、うち7社が増収増益と非常に好調
 電気設備工事業主要10社の19年3月期決算は、10社中9社が増収、うち7社が増収増益となっており、非常に好調な結果となりました(=図表④)。特に、コムシスホールディングスと協和エクシオは同業他社を経営統合したことがプラス要因となり、売上高、経常利益ともに2ケタ増の大幅な増加となっています。
 
 20年3月期の業績予想については10社すべてが増収、うち7社が増収増益を予想しており、全体的に好調な決算が続くと見込まれます。経営統合によるシナジー効果を狙うコムシスホールディングスと協和エクシオは、共に売上高の2ケタ増を予想しています。
 
 
【図表④ 電気設備工事業主要10社の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の予想値】
HT_20190605_004.jpg出所:各社の2019年3月期決算短信より作成


<管工事業>
■10社中9社が増収、うち4社が増収増益
 主に空調設備工事等を手掛ける管工事業主要10社の19年3月期決算は、10社中9社が増収、うち高砂熱学工業、三機工業、ダイダン、テクノ菱和の4社が増収増益であり、好調な結果となりました(=図表⑤)。特に業界3位の三機工業は産業空調を中心とした事業の拡大により、売上高が前期比24.8%増、経常利益が前期比50.7%増と、大幅な増収増益となっています。
 
 20年3月期の業績予想については10社中7社が増収、うち高砂熱学工業、大気社、ダイダン、日比谷総合設備の4社が増収増益を予想しています。利益面では5社が前期割れを予想しており、収益性の確保が課題と言えそうです。
 
【図表⑤ 管工事業主要10社の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の予想値】
HT_20190605_005.jpg出所:各社の2019年3月期決算短信より作成
 
 
<プラントエンジニアリング業>
■10社中7社が増収増益と好調な決算
 石油精製、化学、製鉄、発電等の製造設備の施工などを手掛けるプラントエンジニアリング主要10社の19年3月期決算は、10社中7社が増収増益、うち東芝プラントシステム、タクマ、メタウォーター、太平電業、新興プランテック、富士古河E&Cの6社の経常利益が2ケタ増と、好調な結果となりました(=図表⑥)。ただし、業界2位の千代田化工建設では米国の大型LNG(液化天然ガス)プロジェクトにおいて想定外のコスト増が発生したとして、大幅な赤字を計上しています。
 
 20年3月期の業績予想については、千代田化工建設、栗田工業、タクマ、メタウォーター、太平電業の5社が増収増益を予想しており、好調な決算が続くと見込まれます。
 
【図表⑥ プラントエンジニアリング業主要10社の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の予想値】

HT_20190605_006.jpg出所:各社の2019年3月期決算短信より作成

*栗田工業は、20年3月期より会計基準を変更する予定のため、前期比の増減率を記載していません。

*新興プランテックは、19年7月1日にJXエンジニアリング株式会社と経営統合することから、20年3月期の連結業績予想については、現時点では予測が困難として開示していません。

<住宅建設業>

■10社中4社が増収増益も、6社が減益

 住宅建設業主要10社の19年3月期決算は、大和ハウス工業、ミサワホーム、フジ住宅、ミサワホーム中国の4社が増収増益となりました(=図表⑦)。特に業界トップの大和ハウス工業は売上高、経常利益ともに過去最高を記録し、業界の成長を牽引しています。ただし、経常利益を見ると6社が減益、うち2社が赤字となっており、利益面では厳しい決算の企業も多くなっています。



 20年3月期の業績予想については、大和ハウス工業、飯田グループホールディングス、積水化学工業、サンヨーホームズ、アールシーコアの5社が増収増益と予想する一方、2社が減収減益を見込むなど、企業により明暗が分かれています。

【図表⑦ 住宅建設業主要10社の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の予想値】
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出所:各社の2019年3月期決算短信より作成
 

*ミサワホームの普通株式は、19年12月30日付で上場廃止となる予定であるため、20年3月期の連結業績予想を開示していません。

■ヒューマンタッチ総研所長・髙本和幸(ヒューマンタッチ代表取締役)のコメント
 

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 19年3月期の主要建設企業の決算結果を見ると、ゼネコン、電気設備工事業、管工事業では10社中9社、住宅建設業では8社、土木工事業とプラントエンジニアリング業では7社が増収となっており、建設業界全体として高い成長を実現した年度であったと言えます。
 総務省の労働力調査によれば、18年度の建設業の平均就業者数は500万人で、前年度よりも1万人増加しています。このような成長の背景には、東京オリンピック関連の工事やインフラ整備、大型再開発事業などを確実に消化できる人材を確保できたことがあると思われます。
 また、20年3月期の業績予想でもプラントエンジニアリング業を除く5業種では、売上高が前期を上回る予想になっています。増加する工事を確実に消化できる人材の確保が、事業拡大を目指す建設業各社にとって、引き続き大きな課題になると考えられます。

ヒューマンタッチ株式会社 会社概要 ——————————
●代表者:代表取締役 髙本 和幸
●所在地:東京都新宿区西新宿7-5-25 西新宿プライムスクエア1F
●資本金:1億円
●コーポレートサイトURL:https://human-touch.jp/
●ヒューマンタッチ総研サイトURL:https://kensetsutenshokunavi.jp/souken/
 
<このレポートに関するお問い合わせ>
ヒューマンタッチ株式会社 ヒューマンタッチ総研担当
T E L  :03-6872-1027
E-Mail :htsouken@athuman.com
 
<このリリースに関するお問い合わせ>
ヒューマングループ 広報担当:外川
T E L :03-6846-8002
F A X :03-6846-1220
E-mail :kouhou@athuman.com


ヒューマンホールディングス株式会社の事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:髙本和幸、以下「ヒューマンタッチ」)が運営するヒューマンタッチ総研は、総合工事業(ゼネコン)、土木工事業、電気設備工事業、管工事業、プラントエンジニアリング業、住宅建設業の6業種に分けて、2019年3月期通期決算から見る市場動向をまとめました。対象は3月期決算で18年3月期売上高の上位各10社です。 ヒューマンホールディングス株式会社の事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:髙本和幸、以下「ヒューマンタッチ」)が運営するヒューマンタッチ総研は、総合工事業(ゼネコン)、土木工事業、電気設備工事業、管工事業、プラントエンジニアリング業、住宅建設業の6業種に分けて、2019年3月期通期決算から見る市場動向をまとめました。対象は3月期決算で18年3月期売上高の上位各10社です。

【本件のポイント】

・6業種別主要上場企業各10社の2019年3月期通期の決算から見る建設市場動向をまとめた

・2019年3月期の売上高実績は5業種で前期を上回り、市場規模は拡大傾向、利益も高水準

・ゼネコンは減益ながら売上高は前年同期より増加し、手持ち工事の消化は順調に進行

<全体概況>
■2019年3月期の売上高実績は5業種で前期を上回り、市場規模は拡大傾向、利益も高水準
 19年3月期通期の各業種主要10社合計の業績(連結)と20年3月期の業績予想(連結)をまとめると、19年3月期の売上高は、プラントエンジニアリング業を除く5業種で前期を上回り、各業種ともに市場規模は拡大傾向にあると考えられます(=図表①)。
 経常利益は電気設備工事業、管工事業、住宅建設業の3業種で前期を上回り、土木工事業もほぼ前年並みを確保しており、利益面でも高水準を維持した決算であったと考えられます。
 
 20年3月期についても、プラントエンジニアリング業を除く5業種では売上高は前期を上回る予想になっており、市場規模は拡大傾向が続くと見込まれます。
 経常利益についても、プラントエンジニアリング業が黒字に転換するのをはじめ、電気設備工事業と住宅建設業では前期を上回ることが予想されています。一方、前期を割れる予想の業種もあり、明暗が分かれると見込まれています。
 
【図表① 各業種主要10社合計の2019年3月期(連結)の実績と2020年3月期の業績予想】
【本件のポイント】
・4業種別主要上場企業各10社の2019年3月期の第3四半期決算から見る建設市場動向をまとめた
・土木工事業は減収減益となるも、電気設備工事業と管工事業は増収増益に転じ、業界全体として好調な決算に
・ゼネコンは減益ながら売上高は前年同期より増加し、手持ち工事の消化は順調に進行

<全体概況>電気設備工事業と管工事業は増収増益で好調

2019年3月期の第3四半期決算(連結)の各業種主要10社の実績を合計すると、電気設備工事業と管工事業は増収増益となり、業界全体として好調な決算となりました。ゼネコンは減益ながら売上高は前年同四半期比106.1%となり、手持ち工事の消化は順調に進んでいるとみられます。一方、土木工事業は減収減益となっており、売上高、収益性ともに厳しい決算となっています(=図表①)。