元バレーボール日本代表
木村 沙織
東京都出身。1986年8月19日生まれ。高校卒業後にVリーグの東レアローズへ入団。日本代表として五輪4大会に出場し、長年にわたり女子バレーボール界を牽引した。2016年に元インドアバレー・ビーチバレー選手の日高裕次郎と結婚し、2017年に現役を引退。2023年に第一子となる長男を出産した。カフェの運営やブランドディレクションなど活動の場を広げ、現在は子育てを中心に家族との暮らしを大切にしながら、AWGsアンバサダーとして社会貢献活動にも取り組んでいる。
※AWGsとは、動物目線に立ったSDGs 「Animal Welfare Goals」プロジェクト

SELFingシート
「なりたい自分」を明確にし、実現するために必要な事項を可視化するSELFingのサポートツール。中心に人生目標や「なりたい自分」の姿を書き、実現するために必要な要素を周囲の8マスに、人生を構成する8大分野「健康」「仕事」「経済」「家庭」「社会」「人格」「学習」「遊び」に分けて書きこむフレームワーク。自らデザインする人生の“設計図”としてヒューマングループ各社で導入されている。
なりたい自分像
ワクワクする挑戦を選択する
現役時代も今も、選択肢が出てきた時には、必ず難しいと思うほうだったり、ワクワクする挑戦を選ぶようにしてきました。例えば、バレーボール女子日本代表のキャプテン。私は人前で発言するのが苦手で、キャプテン向きの性格ではないと自覚していたので、最初はお断りをしましたが、自分らしくやってみようと思い最終的にはキャプテンをお引き受けしました。
引退後のセカンドキャリアに関しても結婚や出産なども含めて、さまざまな選択肢があって悩む点も多いとは思うのですが、私は挑戦するほうを選び、念願だったカフェを夫と一緒にオープンしました。
挑戦を選ぶ人生のほうが、もし失敗したとしても経験になり、いろいろなことを学べると思うので、これからもそのスタンスは崩さずやっていきたいですし、息子が迷ったときにも「なんでもやってみよう!」と伝えていきたいなと思います。
家族を軸に広がる世界
現役時代は、バレーボールがとにかく好きで、バレーボール中心の生活でしたが、今回SELFingシートを書いたことで、あらためて「今の私にとっては家族が一番なんだな」と実感しています。「健康」「仕事」「遊び」など、すべての項目に家族が関わっていて、私の人生の中心には家族の幸せがあると気づきました。
現役の時も自分だけが活躍することが目的ではなくて、世界に挑むため、チーム全体の総合力を上げたり、みんながいいプレーができること、チームメイトや応援してくれる周りの人のために何ができるかを考えてきましたが、今はその矢印が家族に向いている感じです。息子がまだ2歳というのもありますし、自分も母親としてまだまだ知らないことばかりなので、勉強している最中。いろいろなお母さんたちの話を聞いて、育児に関するさまざまなことを知るのが楽しいですね。
現役時代のような「オリンピックでメダルを獲る」といった具体的で分かりやすい目標がない分、SELFingシートを書いて自分自身と向き合ったおかげで、自分の中での優先順位が明確になった気がします。
なりたい自分になる「仕事」の位置付け
引退後、新たなる挑戦へ
引退後のセカンドキャリアに迷いはなかったです。昔から「カフェをやりたい」という気持ちがあり、現役時代から貯金するなどの準備を進めて、2019年に夫と一緒にカフェをオープンしました。
それまでアルバイトもしたことがなかったので、オープン当初はすべてが新鮮で、とにかく楽しい!という思いでやっていましたが、すぐにコロナ禍になってしまって。営業ができなかったり、営業が再開できてもお酒の提供をやめたり、営業形態を変えざるを得ない状況になったりと試行錯誤し、大変なこともありましたが、オープン時に立てた「5年は続ける」という目標は達成しました。息子の誕生を機に引っ越しも重なり、お店は閉めることにはなりましたが、次のステージに進めた気がしています。
いつか、コーヒーとお菓子を出すこぢんまりとしたお店をまたやりたいという夢は、今も心の中にありますし、美容やコスメも好きなので、今後はそういった分野のプロデュースにも挑戦してみたいと思っています。
セカンドキャリアで感じたこと
現在は子育てをしながら、イベントやメディア出演をする他、動物たちのための社会貢献活動をしています。バレーボール選手時代は、勝ち負けが必ずあって、「こういうプレーができなかったな」、「あそこで得点を自分が取れていれば」など、その日ごとの反省がありましたが、今は勝ち負けのような分かりやすいゴールがない分、難しいと感じることもあります。今の私にとって仕事は、楽しみ半分・模索半分。ずっと家族へ矢印が向いていましたが、子育てに少し余裕が出てきたことで自分自身に矢印を向ける時間が少しずつ持てるようになってきました。これから徐々に自分のやりたいことを明確にしていけたらと思っています。
仕事をする上で大切にしているのは「楽しむこと」。責任を持って取り組むことはもちろんですが、新しいことに挑戦して学ばせてもらう、そんな気持ちで仕事と向き合っています。
今後の課題は自分の考えが相手に伝わるような言葉選びができるようになることです。これは現役時代のキャプテンの時から苦手なことなのですが、お仕事の面では言葉で伝える場面がたくさんあり、子育ての面でも子どもにわかりやすく短い言葉で伝えないといけないので、学んで克服していきたいなと思います。
これからの「なりたい自分」とは?
子育ての喜びと、40歳の私
バレーボール選手になる前は保育士になりたいと思っていたくらい、昔から子どもが好きでした。息子が今こうして元気に育ってくれている姿に毎日感動しています。夫ももともと子ども好きでしたが、息子が生まれてからは本当に優しいお父さんになって、今の家族のかたちはとても充実しています。
2年後には40歳という節目に少し焦りもありますが(笑)、明るく笑顔で子育てをしていたいと思っています。私が40歳になれば息子は4歳になるころ。もっとたくさんのことを一緒に話せるようになると思います。そんな息子とは親子ではあるけれど、対等な関係でいたい。一緒に学びながら成長していける、そんな関係を築いていけたらと思っています。
※2025年4月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。