ヒューマンビジネスイノベーション

グローバル 2020/01/23 【輝く人】

「仕事と人生の幸せなバランス」
──  ベテラン女性取締役が働く女性に伝えたいこと

ヒューマングローバルコミュニケーションズ
取締役 国府田ライアン真由美


企業や学校・官公庁向けの語学研修や、翻訳・通訳、英文添削などを手がけるヒューマングローバルコミュニケーションズ(以下HGC)。20年以上にわたり取締役として同社を率いてきた国府田真由美は、「仕事と人生の幸せなバランス」を実現したひとり。彼女の会社の将来像、そして働く女性たちへのメッセージとは。

まさに思いつき!ほとんど英語が話せない状態でLAに留学

国府田 「何かを思い立つと、すぐ実行する性格なんです」

そう話す通り、国府田の経歴はダイナミックです。新卒で損害保険会社の事務職に就いた4年目のある日。
突然、無駄な会議が多いことなどに嫌気が差し「いろんな世界を見てみたい」と、その日退職を願い出ます。その後、何の縁もないアメリカ・ロサンゼルスへ飛び立ち、現地での生活を始めたのです。

国府田 「 LAを選んだのは、『アメリカを代表するようなイメージだったから』という、恥ずかしいくらい単純な理由で(笑)。もちろん現地に知人は誰一人おらず、ろくに英語も話せない状態で飛び込みました。本当に思いつきだったんです」

LAでは自分で住まいを探し、留学生向けの語学学校ではなく、移民など新規生活者を対象とした無料のコミュニティ・スクールに通いました。

国府田 「コミュニティ・スクールは、すべてにおいておもしろかったですね。中南米からアラブ系まであらゆる国の人がいて、日本人は私ひとり。授業でディスカッションをすると日本人の常識では思いつかないような意見が出るし、価値観や習慣もまったく違う。毎日が驚きと発見の連続でした」

帰国後、国府田はHGCの前身である、クディラアンド・アソシエイトに入社します。ところがわずか1年で退職し、再び海外へ。次なる国はハワイ、そして台湾人オーナーの企業グループで働くことになります。

国府田 「メインの仕事は不動産の営業でしたが、グループの銀行、フランチャイズの運営に携わりました。従業員のリストラ、営業成績の悪い部門の閉鎖など、数年間であらゆることを経験することができました。
アメリカの企業は個人の仕事の範囲が明確で、自分の職務以外のことには手を出さないのがルールですが、台湾人にとって社員は"家族"という感覚で、仕事の割り振りはその仕事が一番効率的にできる人に回ります。
そんな環境の中で鍛えられ、『どうすれば仕事が回るのか』『互いに前進できるような解決策をどう見いだすのか』を考えながら実践し、業務の枠を超えた仕事をやり遂げられたように思います」

こうして海外で仕事をしてみたいという夢をかなえ、日本に戻った国府田。今度は日本で新たな職場を探し始めます。

社員とその家族も含めて「みんなが幸せであること」がいちばん大事

日本に帰ってきた国府田新たな職場に選んだのは、古巣のクディラアンド・アソシエイトでした。

国府田 「当社は創立当時から、ワークライフバランスが当たり前の会社でした。そもそも『ワークとライフのどちらが大事か』などと考えること自体がナンセンスです。いい仕事をするために自分の人生を犠牲にするようなことがあってはならないし、人は幸せな状況になければ良い仕事もできません。社員の家族も含めて『みんなが幸せであること』がいちばん大事」

そうした考えのもと、短時間勤務やフレックスタイム、在宅勤務など、社員それぞれの事情や状況に応じて多様な働き方ができるような環境が整えられてきました。たとえば、外国人社員が子どもの教育などで母国に帰ることになった場合も、テレワークやクラウドなどを活用して外国でも仕事を続けることができます。

さらに、日本企業で近年、組織活性化と企業価値向上のための施策として注目されているダイバーシティや女性の活躍推進についても、同社は早くから「当たり前のこと」として取り組んできました。語学サービスという事業の特性上、社員の3分の2は外国人。現在は8カ国の社員が働いており、多くの女性社員が活躍しています。

国府田 「国籍も性別も年齢もさまざまな社員が力を合わせて仕事をやっていくには、コミュニケーションが欠かせません。クディラ氏は『とにかく話し合って解決の道を探す』という考えの人で、みんなで激しい議論を闘わせて会社を正しい方向へ動かしていく、ということをやってきました。とことん話し合うことでお互いの考えを理解し、お互いに相手を認め、尊重し合う関係が生まれてきます」

クディラアンド・アソシエイトは2014年に教育事業を核にグローバル展開するヒューマングループと資本提携を行い、17年にはヒューマングローバルコミュニケーションズに社名を変更しましたが、創立当初からの「人が財産」という理念は貫かれています。

国府田 「私たちが長年の取り組みで実現してきた、社員がそれぞれの能力を存分に発揮し、長く働き続けられるという職場環境はそのままに、ヒューマングループの一員となることで、事業展開や人的交流の面で大きなシナジー効果が生まれていると感じますね」

世に誇れる仕事をしている社員と、お客様とをつなぐ

HGCは2015年4月に「東京都中央区ワーク・ライフ・バランス推進企業」に認定(2019年4月に再認定)、2016年2月には「東京ワークライフバランス認定企業」に認定されるなど、ワークライフバランスの先進企業として高い評価を受けています。

国府田 「創立当初から会社として当たり前と思ってきたことをそのまま続けてきただけで、むしろ世間でいう『ワークライフバランス』の考え方が当社に近づいてきたのかな、という印象ですね」

「働きやすさ」は、社員の定着率の高さにも現れています。社員の平均勤続年数は15年近く、70代半ばの社員も第一線で働いています。転職やヘッドハンティングでキャリアアップを目指すのが一般的な外国人社員や、プロフェッショナルな専門職の人材が多い職場で、この平均勤続年数の長さは極めて異例と言えます。

そんなワークライフバランスを体現しているHGCですが、国府田は日々の仕事の中で感じているやりがいと喜びについて、こう語ります。

国府田 「当社は、論文や技術文書などの研究・技術に関する英語やビジネス英語など、高い専門性と知識が必要な翻訳・通訳・語学研修に特化しており、社員はプロフェッショナルな職人ぞろいです。
私の仕事は営業ですが、『当社は世に誇れる仕事をしている』『当社の翻訳が一番すばらしい』と心から思えるので、自信を持ってお客様に営業できます。いい仕事をしてくれる社員とお客様をつなぎ、心を通わせて、この人たちと一緒に仕事をしたいという信頼関係を築いていくことに、やりがいを感じているのです。
当社の仕事のクオリティーの高さをお客様にきちんと伝えること、そして彼らが自分の実力を存分に発揮できる環境を整えることが、私の仕事だと思っています」

性別や環境に関係なく、優秀な人が活躍できる社会であるために

2019年に創立50周年の節目を迎えたHGCは、多言語翻訳を行う京都府の企業・アラシアスの事業を譲り受け、多言語翻訳部門を自社内に置き、2019年10月に大阪支社とともに心斎橋に統合移転するなど、新たな挑戦を始めています。

国府田 「 AI(人工知能)や自動翻訳の進化で翻訳・通訳のニーズが減るとの意見もありますが、私は逆の見方をしています。グローバル化が進む中で、異文化コミュニケーションのプロフェッショナルや、高度な専門知識を備えた、書き手の意図を正しく伝える『プロの人間による翻訳・文書編集』が、ここ数年はますます求められるようになると思うのです。
ですから、言語サービスと異文化コミュニケーションを通して、人々が自分の価値を高めていく会社でありたいと考えていますね」

これまで第一線で活躍してきた国府田。そんな彼女が働く女性たちに向けて発信したいメッセージとはなんでしょう。

国府田 「今の日本では、女性がフルタイムで働き続けるのは、まだまだ大変なことだと思います。まじめで頑張り屋な人も多く、仕事と家庭の両立を頑張りすぎてつぶれてしまう女性や、自分の実力を過小評価して、せっかくのチャンスが来ても『私には無理』と辞退してしまう女性も少なくありません。
しかし、優秀な人が自分でブレーキをかけてしまうのは、とてももったいないこと。独身でも結婚していても、子どもがいてもいなくても、そして男女すべてに言えることですが、家族の事情や自分の病気などで思うように働けない状況に陥ることは、誰にでも起こりうる。
だから、罪悪感を抱く必要はありません。『お互いさま』と思う気持ちと、いま置かれている状況で自分のベストを尽くすことが大切だと思います。そして難しいことではありますが、心に余裕を持ち、『幸せだと感じられる力』を失わないでほしいですね」

仕事もプライベートも含めて人生を丸ごと楽しもうとする姿勢と、自分の幸せを大切にすること、そして、「お互いさま」の気持ちで助け合いながら働くこと──女性の活躍推進にはこれらが欠かせない、と考えています。
国府田は今後も女性の活躍推進を行い、一人ひとりが「仕事と人生の幸せなバランス」を実現できるよう、サポートしていきます。

ヒューマングローバルコミュニケーションズ ウェブサイトはこちら: https://human-gc.jp/

※2020年1月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものとなります。

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