育てるのに「いいもの」を子どもたちに。<br>唯一無二の保育園を作り上げる
保育事業

育てるのに「いいもの」を子どもたちに。
唯一無二の保育園を作り上げる

ヒューマンスターチャイルド株式会社
取締役 西宮 裕美子さん

西宮 裕美子(にしみや ゆみこ)さん

神奈川県生まれ。2007年、株式会社みつば(現・ヒューマンスターチャイルド株式会社)に入社。保育士の派遣事業や研修事業に携わる。2011年より保育所の開発を担当し、コンセプトを持った施設づくりを手掛けてきた。2017年4月より取締役に就任。趣味は山登りとヨガ。

デザイン性の高い施設や食材にこだわった給食など、安全で工夫を凝らした保育環境が評判の保育所「スターチャイルドナーサリー」。2017年4月1日現在、保育所の需要が大きい横浜市、川崎市、さいたま市の各エリアで15園を展開している。2011年に開設した川和ナーサリー以降、各園それぞれコンセプトを持ち、随所に安全へのこだわりが見受けられる唯一無二と言っていい保育所だ。「子どもたちをただ預かるだけではなく、すべてにおいて”いいもの”で育てたい」との思いから開発を手掛けているヒューマンスターチャイルド株式会社の西宮 裕美子さんに話を聞いた。

使いやすくかつ安全に。子どもファーストの視点で作るオリジナル家具

エントランスを入ると天井が高く、吹き抜けの空間が広がっていた。2017年4月1日に開園したスターチャイルド新吉田ナーサリー(横浜市港北区)。温かい雰囲気に包まれた木目調の園内で、西宮さんが優しい笑顔で迎えてくれた。「床はクリの木を使用しているんです。0歳児~2歳児が過ごすスペースは、はいはいをしたりするので床暖房を入れるんですが、クリの木は伸縮が少なく、季節問わず素材が隆起しないので安全なんです」と西宮さん。一方、机などの家具には硬く丈夫なナラの木の素材が適しているという。「できる限り安全で国産のものを」と、北海道産を取り寄せるこだわりぶりだ。

葉っぱフック。
子どもたちがぶつかってもけがをしない設計に。

スターチャイルドナーサリーの家具は、一見すると何の変哲もないように見受けられるが、実は工夫が凝らされているものばかり。上着を掛けるフックは先を丸くした葉っぱの形。棚は、落下防止に端が数ミリ盛り上がり、角は丸みを帯びている。すべて子どもが強く当たってもけがをしないようにとの配慮からだ。外からは見えないが、片側の下部にキャスターが付いていて動かせる棚もある。しかし引っ張ってみると意外と重い。「わざと重くしているんです。軽いと子どもがぶつかった時に転倒したりして、危険が及ぶ可能性があるでしょう?便利に使いたいけれど、やはり安全には代えられませんから」。家具はすべてオリジナル。西宮さんのアイデアが形になったものだ。「実際に使っている保育士さんの意見をもらいながらトライ&エラーを繰り返して、ひとつひとつ改善してきたものが今に至っています」。子どものことを第一に考えた工夫が随所に凝らされている。

「自然」をテーマにコンセプトを策定。手掛けた保育所が数々のデザイン賞を受賞

新吉田ナーサリーの特徴的なデッキ。
1階〜2階上部まで行き来できる。

スターチャイルドナーサリーはデザイン性の高さでも知られている。これは、西宮さんが2011年に開発を手掛けるようになってからのことだ。「スターチャイルドのコンセプトを明確にしていきたいとの思いがありました。ではどんな施設を作ろうかと考えた時、当時は知識が全くのゼロだったので、制度の勉強から児童福祉施設を作るための概要などをまず勉強しましたね」。

同時にほかの保育園の見学を始めた。しかし、相手は同業他社。電話でアポイントを取るも、何度も断られた。それでも「スターチャイルドではほかの保育園のまねをするのではなく、これまでにないものを造ろうと思っていました」。そのために、粘り強く電話をかけては足を運んだ。そうして2〜3か月で約20園ほどを見学し、決めたコンセプトは「自然」。触れるもの、口にするもの、目に入るもの、すべてにこだわった空間を作り出すことにしたのだ。

手洗いや歯みがきを行う「泉」。
カラフルな色合いが楽しい。

一級建築士と相談しながらの試行錯誤が始まった。まず、各園のテーマを決める。例えば、2017年4月に開園した新吉田ナーサリーの場合は「日々の風」。鶴見川沿いにある立地を生かし、子どもたちが移り変わる四季を日々感じられることに主眼を置いた。そのひとつが、1階から2階上部までを行き来できるデッキ部分。最上部からは鶴見川を臨め、心地よい風を感じることができるようにした。また、子どもたちが手洗いや歯磨きを行う場所は「泉」と呼ばれ、年齢ごとに色や高さを変えている。ナチュラルテイストの園内の中でも、ここだけはモザイクタイルを使用しカラフルな印象だが、「子どもたちが気持ちや行動を切り替えられるためのものでもあります。大人でも手を洗う事ですっきりした気持ちになりますよね。それと同じで、気持ちの切り替えに大切な場所と考え、色彩や形にこだわりを持って造り込んでいます」。西宮さんはそう教えてくれた。

西宮さんがこれまで開発を手掛けた園は12園。各園それぞれにコンセプト、こだわりがある。中でも、川和ナーサリーが公益社団法人こども環境学会の「デザイン奨励賞」、金沢文庫、藤が丘、荏田北、たまプラーザ、浦和の各保育所がキッズデザイン協議会の「キッズデザイン賞」を受賞するなど、内外から高い評価を得ていることが分かる。

ほぼ残業なし!ホワイト保育園である秘訣

スターチャイルドナーサリーが評価を得ているのは、デザインだけではない。保育の質でも保護者の方や行政からの評価が高いのだ。保育士の過剰労働が問題視されブラック保育園と言われている保育園が世の中には存在することを尋ねると「おかげさまで、保育士さんの定着率が上がってきています。残業もほとんどありませんし、ワークライフバランスが取れていて、働きやすいと言ってくださっています」と西宮さん。スターチャイルドナーサリーでは、保育士の残業自体、多い月で6~8時間程度と少なく(※)、また、業務も保育に集中できる環境を整えている。

そして何といっても人材採用の面も大きい。西宮さん曰く、採用の条件は「喜びをともに分かち合える人」。面接ではその人がどこに価値観を見出しているかを引き出し、共感できるポイントを探すという。「牛乳を飲めなかった子が飲めるようになったり、よちよち歩きだった子がつかまり立ちで歩けるようになったりした時に一緒に喜べる人、人の喜びを自分の喜びと思える人を採用しています。その結果、保育に対して同じ価値観を持った人たちが集まっているので、自然といいチームワークができているのでは」とその秘訣を教えてくれた。
※2016年度実績より

現場の声を聞くことが大切。コミュニケーションのこだわり

西宮さんの現在の仕事は、新園の開設など保育所の企画開発、研修などを含む保育所運営にかかわるマネジメント、人材採用や新規事業のフォローなど。忙しい毎日を過ごしているが、「現場には極力足を運びたい」と話す。「実際に保育所を訪問できるのは月に1~2回なんですけど、現場とのコミュニケーションを大切にしています。やはり現場で働くスタッフの声が一番大切ですし、その声を基にさらに良い職場環境やサービス内容、施設を作り上げていきたいですね」。

もうひとつ、西宮さんがコミュニケーションの上で大切にしているのが、プラス面を引き出すこと。「子どもたちに対してはもちろんですが、スタッフに対しても、やるべき事を明確に伝えた上で、プラス面を多く伝えるようにしています」。そう言って微笑む西宮さんの周りには同士と呼べる人たちが集まるのだろう。スターチャイルドに通ってくる子どもたちはもちろん、保護者、保育士や現場スタッフの笑顔が、西宮さんの仕事の成果を物語っている。

スターチャイルド 新吉田ナーサリー 園長
髙橋 順子さん

スターチャイルドナーサリーでは、園長も保育士もみんなで一緒に園を運営できていることを実感しています。他の保育所では、園長先生は経営や運営に対する事務作業に追われているという話を聞くこともありますが、スターチャイルドナーサリーでは経営にかかわる事務を本社が担当してくれるので、保育に集中できます。私自身、子どもたちと過ごす時間が多いのが大変嬉しいです。

ここでは子どもたちが主役です。先生はそのお手伝いをするだけ。その観点から、どの部分に注力するかを決め、仕事の効率化を図っています。それぞれライフイベントがあるとは思いますが、できれば保育士の先生には辞めずに続けてもらいたいですね。その人のために何ができるかをみんなで助け合って考えていける園だと思います。

※2017年6月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものとなります。