My Story 01
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たくさんのありがとうをもらえる介護士に

介護実習生としてインドネシアから日本にやってきたヴェラ・スシラワティさん。2019年2月に介護施設「ヒューマンライフケア浦和の樹」に配属されてからは、仕事に勉強にと充実した日々を過ごしている。言葉も文化も異なる日本で学び、働く彼女のリアルな思いに迫った。

日本語の上達は、介護のスキルアップにもつながる。
現在の目標は、日本語検定2級の合格だ。
大学の卒業式で両親とともに。
赤ちゃんの頃から身につけているピアス。
仕事中もパスケースに入れて肌身離さない。
仕事の休憩時間には、お祈りを。
これはイスラム教徒のつとめだ。
信仰上の理由から豚肉は口にしない
彼女の大好物、きつねうどん。
ときには特技の弾き語りで、
入居者さんに喜んでもらうことも。
たくさんの苦労を乗り越えてこられたのは、
ヴェラさんと同じインドネシアからやってきた
実習生のルームメイトと一緒だったから。

「どこの国にいたって大切なことはひとつ。自分自身のやりたいことに忠実であることだ」。技能実習生として日本へと渡るヴェラさんに、彼女の父が贈った言葉だ。大学4年生のときに、日本で働きながら介護を学べる本制度を知った彼女は、「私のやりたいことはこれだ!」と直感したという。ところが異国で学ぶという選択に、彼女の母は大反対。母を説得し、優しく背中を押してくれたのは父だった。「今こうして充実の日々を送れているのは父のおかげです」

日本の介護は、ホスピタリティに溢れている。だからこそ「心持ちひとつで、サービスの質には大きな差が生まれる」とヴェラさんは明言する。そんな日本流を身につけるために、この一年間は介護に日本語にと、日夜ひたむきに努力を重ねてきた。今となっては日本語で自然なコミュニケーションをとりながら、起床から食事、入浴、就寝まで一連の介助をひとりで担うほどだ。それでもはにかみながら「私はまだまだです」と控え目なヴェラさん。

手際良くルーティンワークをこなすかたわら、入居者の百寿のお祝いに似顔絵をプレゼントしたり、施設内のイベントで弾き語りに興じたりするのも、ヴェラさんのホスピタリティのあらわれだ。マニュアル通りの仕事では飽き足らず、もう一手間を凝らしてきた彼女のやる気を支えるものは何なのか。「 “ここは人生の最期を過ごす場所ですね”と、ある入居者さんのご家族がおっしゃったのです。その一言にはハッとしました。これを境に、私の心持ちは様変わりました」

「みなさんの笑顔のためなら、私にできることは何だってしたい」と目を輝かせる彼女は、介護だけではなく敬語の習得にも余念がない。相手に対するリスペクトを会話のなかで表現できてこそ、介護される側も心を開けるものだからだ。「入居者のみなさんをパッと和ませる先輩が私のお手本です。あんな風に気持ちのいい敬語を使いこなしたい」

来日して一年半、早くも介護の本質をつかみつつあるヴェラさんの思いは、入居者のみなさんにもしっかりと届いている。すっかり施設に溶け込み、周囲から孫のように愛される彼女に、これまで笑顔のなかった入居者さんが突如「いつもありがとう」と微笑みかける一幕もあった。「すごく嬉しかった。ありがとうの一言は何よりのエネルギーです。どんな疲れも吹き飛びます」 「たくさんのありがとうをもらえる介護士になりたい」。そう静かに決意を語るヴェラさんの挑戦はいまだ始まったばかり。介護の技能面でも学ぶべきことは山積みだが、やり甲斐は十分。今日も父の教えを胸に、理想の自分に向かってひたむきに歩み続けていく。