ヒューマンビジネスイノベーション

児童教育 2018/01/31 【輝く人】

立ち上がれ!ロボット教室
快進撃の裏にある、知られざる下積み時代

ヒューマンアカデミー株式会社
ヒューマンアカデミーロボット教室
チーフマネージャー 神野佳彦さん

チーフマネージャー 神野佳彦さん

Profile

神野 佳彦(かんの よしひこ)さん
某大手衛星予備校などを経て、2008年にヒューマンエヌディー株式会社(2013年にヒューマンアカデミー株式会社に吸収合併)に入社。以来、ロボット教室の立ち上げに携わる。2015年よりチーフマネージャー。営業から教室の運営サポート、海外支援に至るまでを手掛ける。趣味はドライブ。

モノづくり大国ニッポンの未来を担う子どもたちが目を輝かせて通ってくる教室がある。ヒューマンアカデミーロボット教室。世間がプログラミング教育にそれほど関心がなかった2009年に事業を開始し、2017年9月末時点では教室数約1100、在籍生徒数は1万7500人を超えた。このロボット教室の創業時から事業に関わり、育ててきたのがヒューマンアカデミー株式会社のチーフマネージャー、神野佳彦さん。赤字続きで何度も事業の見直しを迫られた創業当初から、いかにしてロボット教室は立ち上がったのか。その苦労や成長の裏側を聞いた。

ロボット教育の先駆け 原点はモノづくりへの想い

チーフマネージャー 神野佳彦さん

「子どもたちが好きなことからいろんなことを学べるコンテンツをつくりたい」。2009年、神野さんがロボット教室に関わるきっかけになったのは、ロボットクリエーターの高橋智隆先生との出会いだった。高橋先生と言えば、ロボット電話「ロボホン」、ロボット宇宙飛行士「キロボ」、デアゴスティーニ・ジャパン「週刊ロビ」など代表作は枚挙にいとまがないが、当時から、ロボカップ世界大会で複数回優勝し、米国の科学技術雑誌・ポピュラーサイエンス誌で「未来を変える33人」に選ばれるなど頭角を現していた。神野さんは振り返る。「当時から高橋先生は、『モノづくり日本の未来に子どもたちの力が必要だ、そのために何かやりたい』という気持ちをお持ちでした。一方で、その基礎となるロボット作りやその仕組みを楽しんで学べる教室はまだなかった。そこで、ロボット教室を始めようとなったんです」。ヒューマンアカデミーロボット教室の第1号教室は大阪に開校。その後、東京にも開校し、全国でのフランチャイズ展開が始まった。

赤字続きの創業時。撤退の危機

一見すると、競争のない未開拓市場である"ブルー・オーシャン"に、順風満帆に教室を開校できたように見えるが、実際は苦労の連続だった。「当時は、ロボット教室って何?という感じでした。日本ではまだ習い事として認知されていなかったと思います」。軌道に乗るまで4〜5年間は、学習塾の経営者にロボット教室を手掛けないかと営業をかけても、「国語や算数は教えられるが、ロボットは教えられないよ」と断られ続け、なかなかフランチャイズ加盟が伸びなかった。そのたびに何度も指導マニュアルを分かりやすく作り変えた。通常は開業する教室が自ら行う生徒募集や体験授業にも、積極的にサポートに入った。神野さんも連日、子どもたちにチラシを配った。「夕方、小学校近くで、わざと体験教室のチラシの"ロボット"の文字が見えるようにして立っているんです。すると子どもたちが、『おお、ロボットだ!』と目を輝かせて集まってくるんですね(笑)」。

「フランチャイズ本部なのに、こんなことまでするのか―」。社内からは、そんな声が聞こえてきた。休日出勤して働いても、入会数が思うように伸びず、5年間も赤字が続いた。一時は、ロボットを作るブロックに不良品が発生し、頭を下げて対応に追われたこともある。仲間が一人ひとりと去っていく厳しい状況の中、しかし、神野さんはそれでもロボット教室の成功を信じていた。「授業を受けた子どもたちの楽しそうな表情が、プログラムの面白さを裏付けていましたから」。我が子がこんなに楽しんで通う習い事はなかった、と言ってくれる保護者の温かい声が心の支えだった。

ロボットに展望を見出す新時代の到来

ロボットに展望を見出す新時代の到来

「高橋先生の作るロボットのプログラムは素晴らしかった。いつかは絶対受け入れられるはずだと確信していました」。できることはすべてやった。教材の改良、体験授業の運営方法の見直し、心に響く説明の仕方、フランチャイズ加盟教室に対するサポート―。徹底的に改善を重ねた。下地が整ったところに、時代の風が吹いてきた。IT技術の革新が急速に進む中、子どものころからロボット製作やプログラミングに触れることの重要性を社会全体が認識するようになった。また、国も小学校でのプログラミング教育必修化を進めてきた。こうした社会の変化を背景に、ヒューマンアカデミーロボット教室も軌道に乗り始めると間もなく、急激に教室数、生徒数が増えていった。「ウェブを中心としたプロモーションの仕方や教室運営の方法は、試行錯誤を重ね、それまでに確立していました。さらに、プログラムの面白さ、丁寧なフランチャイズ指導の評判も相まって、時代の流れにうまく乗れたのだと思います」と神野さんは分析する。

他とは一線を画すプログラムも、人気の秘密だ。「いきなりプログラミングから入るのではなく、ブロックで作ったロボットを動かすうちに、動きの仕組みを理解し、自然とプログラミングのイメージができるようになっていく」と神野さん。今では、「プライマリー」「ベーシック」「ミドル」「アドバンスプログラミング」など知識や技量に応じた多彩なコースを取り揃え、5歳〜中学3年生までの多くの子どもたちが学んでいる。「ロボットは難しいという先入観を打ち破りたい。理系好きを増やします」と神野さん。プログラミング教育の新時代に合った事業として快進撃は続く。

大成功の全国大会。次の舞台は世界へ

大成功の全国大会。次の舞台は世界へ
ヒューマンアカデミーロボット教室全国大会。
会場は、詰め掛けた観客の熱気に包まれた

2017年8月。全国のロボット教室から生徒たちが集まり、自作のロボットの技術やアイデアを競う第7回の「ヒューマンアカデミーロボット教室全国大会」が東京大学・安田講堂で行われていた。北日本・関東・中部・西日本・九州の全国5地区の予選を勝ち抜いた34人と、中国・上海の大会で入賞した2人が参加し、日ごろの学習の成果を競った。初回から大会の企画・運営を手掛けてきた神野さんは、「回を追うごとにレベルが上がっていて、見ていて楽しいです」と目を細める。会場には1200人の観客が詰めかけ、相当な熱気に包まれていた。

舞台は日本にとどまらない。神野さん自身も中国や台湾にフランチャイズが広がるにつれ、海外を訪れることも多くなった。「日本の教育に対する信頼は厚い。最初は、海外に駐在している日本人のお子さんをターゲットにしていたのですが、現地の子どもたちの習い事としても引き合いを数多くいただいています」。今はアジアでの展開が中心だが、将来は欧米展開も視野に入れる。一時は撤退も検討されたロボット教室が今、世界で受け入れられようとしている。下積み時代からロボット教室を支えてきた神野さんに、次の夢は何かと問うと、こう返ってきた。「ヒューマンアカデミーロボット教室の世界大会を開くこと」。

※2018年1月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。肩書き・役職等は取材時のものとなります。

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