ヒューマンビジネスイノベーション

仕事 2014/08/31

【インタビュー】学び働く人 日本語教師 黒田淳子さん


プロフィール:
神戸大学法学部卒業後、通信会社に就職。ご主人の海外転勤を機に退職し、シンガポールで8年間暮らす。シンガポールでは、ボランティアでの日本語教師や日系企業での秘書などを経験。子育てがひと段落ついたことで、日本語教師としての仕事を始める。

   「行く、行かれる、読む、読まれる、では“話す”は?  そう、話されるですね」―――。
   外国人を前に大きな声で日本語の尊敬語について説明するのは、ヒューマンアカデミー日本語学校(東京・新宿区)の講師、黒田淳子さん。ハキハキした様子からは想像できないが、講師歴1年弱の新人だ。40歳を過ぎて420時間の日本語教師養成講座に通い始めて日本語教育能力検定試験に合格。その後、ヒューマンアカデミー日本語学校に就職した努力家だ。

「自分の知らない外の世界を知りたい」―――。
  黒田さんは兵庫県神戸市出身。150年近く前に開港した神戸は、早くから外国の人や文化が入り込む国際都市と言われる。そんな都市で育ち、帰国子女の友達がいたことも影響してか、幼いころから海外への憧れがあった。「自分の知らない外の世界にいる人のことを知りたい」と思っていた黒田さんは、地元の国立大学に進学して国際関係を学んだ。卒業後に就職したのは、当時の就職人気ランキングで常に上位にくる大手通信会社。お客様窓口での対応や販売企画、経理など幅広い仕事を経験した。元来、人と接することが好きだった黒田さん。キャリアを積み上げる中で、コミュニケーションスキルを高めていった。 0905_gt_01.jpg
 

外の世界に出て感じた「きちんと学ぶ大切さ」
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▲シンガポールで働いていた頃/黒田さん提供写真

  転機は29歳の時だった。ご主人がシンガポールへ転勤することになったのだ。外の世界を知る大きなチャンス。黒田さんは通信会社を退職し、未知の国へ渡った。
 シンガポールでは、「日本語」と日本での会社員時代に身につけた「コミュニケーション力」を活かし、語学学校のスタッフや秘書の仕事に携わった。中でも、ベトナム難民に日本語を教えたことは、のちの黒田さんに大きな影響を与えることとなった。難民は、日本語を習得することでより良い仕事を得られるため、必死で日本語を学ぼうとする。そんな難民に日本を教えるうちに、一生懸命学ぶ外国人の役に立ちたいという思いと、うまく教えられないもどかしさを感じるようになったと、黒田さんは話す。「日本人だから日本語を教えられると思っていたけれど、そうではなかった。きちんときちんと学んで体系立てて教えられるようになりたい」。アカデミックな理論に裏付けられた知識を持つ日本語教師になるという目標がひそかに生じた瞬間だった。

大変だったけど現場につながる1年3カ月
  ひそかな目標を胸に帰国した黒田さんが実際に動き始めたのは、お子さんが中学に入学したときだった。学ぶ先として選んだのは、ヒューマンアカデミー(株)が運営する日本語教師養成講座。「外国人相手の実習が多く、実践的なことを学べるから」とその理由を話す黒田さんだが、驚いたことに、日本語教師の有資格者とされる「日本語教育能力検定試験」には通学途中で合格したという。それでも最後まで養成講座に通い続けた理由について、「自分が教えられる側に立った時、試験だけに受かった人よりもきちんとしたノウハウをもった人に教わりたいから」と言い切る。外国人に日本語をうまく教えられないもどかしさを体験した黒田さんの言葉には、説得力を感じる。
  ヒューマンアカデミー(株)が運営する日本語教師養成講座は、黒田さんが思った通り体系的に学べる充実のカリキュラムだったが、その分、厳しい毎日を過ごした。仲間の受講者を生徒に見たてた模擬授業の準備、中上級者向けの機能語分析、実際の外国人向けの実習などの準備で忙しく、「ハードな1年3カ月でした」と黒田さんは振り返る。でも、そんな日々があったからこそ、今の現場での戸惑いを乗り越えられるのだと感じている。
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▲事前に準備する授業用の資料

外国人を支え、日本のファンを増やしたい
0905_gt_04.jpg    日本語教師養成講座を修了した黒田さんは、ヒューマンアカデミー日本語学校に就業した。「採用過程で行われた模擬授業に加え、朗らかで明るい人柄と柔軟に対応できるところが魅力」と採用担当者は評価する。
   当然ながら、現場である教室では苦労もある。「教室中に、はてなマークが浮いていると感じる」ことも多いそうで、「よし、うまくいった!と思える日はありません。帰りの電車の中ではどんよりとしていることも多いですよ」と笑顔からは想像できない言葉が返ってきた。それでもより良い授業のために努力し続けられるのは、「じっと見つめて授業を聞いてくれる生徒さんたちがいるから」。多くは、日本の大学や大学院への進学を目指している。今度こそきちんと教えてあげたい。その思いが黒田さんのモチベーションだ。また「外国から来た生徒さんたちに日本語を教えることが、日本を好きになる人を増やすことにつながる」と黒田さんは信じている。
  幼い頃に世界に出たいと憧れていた黒田さんはいま、世界へ踏み出そうとしている人たちを支える頼もしい存在になっている。

※日本語教育能力検定試験:
日本語教師を目指す方、またはすでに日本語教師として活動されている方を対象に、日本語教育の専門家としてのスキルが基礎的水準に達しているかを証明する資格。公益財団法人日本国際教育支援協会が主催し公益社団法人日本語教育学会が認定している。

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【高まる日本語教師へのニーズ】

 ヒューマンアカデミー(株)が運営する「ヒューマンアカデミー日本語学校」(東京、大阪)で学ぶ外国人は、年々増えています。2014年10月時点の生徒数は、わずか1年半前に比べて70%以上増加しました。とりわけ、ベトナムとネパールからの留学生の増加が顕著です。ベトナムは、日系企業の進出が盛んであるうえに、中国に代わってオフショアの拠点となりつつあります。ネパール人は、働きながら学べる日本に魅力を感じているようです。国内および海外進出する日系企業の増加と、それに伴う外国人採用の増加が続く限り、今後も日本語を学ぶ外国人は増え続けるとみられます。日本語教育は採用後の定着率向上の観点からも重要です。
 こうした中で、黒田さんのような日本語教師のニーズが高まっています。教育事業を運営するヒューマンアカデミー(株)の「日本語教師養成講座」受講生数(2013年度)は2,433人と、対前年度比20%増となっています。今後も、増え続けるニーズに応えるため、体系的な知識を持つ優秀な日本語教師を輩出するための努力を続けていきます。一方で、総合人材会社のヒューマンリソシア(株)は、日本語教師の派遣・紹介事業に力をいれていく予定です。
 ヒューマングループは一丸となって、今後もグローバル化のニーズに応えていきます。

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【今後のビジネスモデル】

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